ドイツへ出稼ぎに出た母が殺されたことを知らぬまま、トルコで反政府活動を行う娘はドイツへ逃亡する。母と娘の物語が、ドイツとトルコの二つの国の二つの家族に波紋を起こし、それぞれが交差していく。
親は子を思い、子は親を思うが、面と向き合うと伝えられない。離れて初めてかけがえがないことに気がつく。
トルコ移民の父と二世で大学講師の息子。
ドイツ人のシングルマザーと学生の娘。
トルコからの出稼ぎの娼婦とその娘。
よく練られた脚本だった。三つの家族がどこでどう繋がるのか、バラバラだった糸が少しずつ絡み、微妙にズレ、再び一つに集約していく。謎解きのよう。
移民大国と言われるドイツは終戦後の復興にトルコ人労働者を必要とし入国を簡易化したため、移民の多くをトルコ人が占めている。そのままドイツに居続け、移民二世、三世の代になっている背景がある。
親孝行したい時に親はなし、というように、若い時には、まだいくらでも親に甘えられると思い、スネを噛りまくり丸抱えしてもらっている。それなのに、悪態ついたり、優しい言葉をかけることもない。親の欠点ばかりが目につき、親が逆に弱気になって甘えてくることを拒絶する。そんな娘や息子たちが、親との関係を見直していく。
ドイツ/トルコの制作で、ドイツよりアジア的な親子関係に映った。
個人的な2ヶ国間の関係だけではなく、国同士についても描いたのかもしれないが、読み取れなかった。
邦題は雰囲気いいけど、「帰る」ではなく、「その向こうへ」が近い。戻ってくるのではなく、前に進む。関係の回帰より進歩を描いている。