垂直落下式サミング

SPACE BATTLESHIP ヤマトの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010年製作の映画)
3.0
キムタク・ヤマト。
古代進は、自分の怒りと正当性を伝えてから沖田艦長に殴りかかる。これ、違うんじゃないかな。なんでダメな邦画は、感情的になったニンゲンは、こころの内をぜんぶ話しながら荒ぶるもんだって思ってんだろう。
怒りによって我をなくして殴りかかったところを兵士に止められてから、うつ向きながら「あんた雪風を盾にしたのか?!」って身の上話がポロッとはこぼれるんならわかるんだけど、うがー!なんでだー!俺が弟だー!みたいなのは見苦しくてみてらんない。
こんだけ有名な役者が揃ってんのに、いい演技ひとつもなくてダメだった。ぜんぶが、すごく説明的というか、作劇として鈍重というか、動きと口とが連動していないというか。娯楽映画なんだから、状況の説明とかはサクサクっとして、VFXの見せ場に繋げてくれたほうがうれしいっす。
キムタクの演技は、まあキムタクだからいいんだけど、そのまわりの奴らまでチャラい大学生みたいなノリしててキツいなあって…。コイツらは、波風たてないってことを知らないのか。軍人なんだから、一応は上司がいて組織に属してる身なわけじゃん。
判断すんのは上の仕事で、兵隊はやれって言われたことやるのが仕事なわけで、ラフに命令に背いちゃうのはどうなの。現場だけでも、会議室だけでも、仕事はまわんないのだよ。わかったかぁ、青島ぁ。
VFXはすげえ。「ヤマト発進!」で地中に埋もれてる機体が、ずごごごごっと浮き上がってくるケレンからの最初の空中戦闘に繋がっていく流れは、とてもよかった。スケールの大きさが素晴らしい。でかい。強い。大味な火力。これがヤマトの醍醐味だと思う。
でも、スターウォーズのパクリみたいな、最後の作戦はへっぽこ。ステルス機だけどエンジンをつけると感知されるから、自由落下で死地に向かっていくところはワクワクするのに、そのあと地べたに着いてからは、ぜんぶつまんない。
てか、作戦としておかしくない?こういう危険地帯突入任務って、たいていの場合は海兵隊が頑張って敵地に乗り込んでいくんだから、普通なら飛行機とかヘリコプターで上空からの援護射撃をして、機関砲で敵を一掃して少しでも地上部隊を動きやすくしてほしいと思うんだけど、飛行機乗りのキムタクまで降りてきちゃうのが意味不明。森雪と古代以外全滅するの、オマエの作戦がミスってたからだろ。
にしたって、あんな敵ばっかのところで、戦闘機乗り捨てるアホがいるか。案の定敵に壊されちゃってるんだけど、森雪の機体だけまだ飛べます!ってのも御都合~ってカンジだし、ギバちゃんが最後に言う「弟のように思っていた」ってのも原作では名セリフなんだけど、お前らこの実写版ではあんま絡みなかったじゃんっ!実際、古代くんったら森雪とのロマンスにうつつを抜かしてて、他の乗組員との関係性は気迫だったと思いましたけども…。
山崎貴監督が描くアクションは、緊迫した状況のメリハリを作るのがヘタだと思う。急にドカーンッ!今すぐやらなきゃ!みたいなのがあってもいいのに、人物のリアクションみたいなのがワンクッション入ることで、観客のビックリは阻害される。もうちょっと、感覚的なショック描写で裏切ってほしかった。
生存者の三十と余人で動かせてるのも、宇宙戦艦チョロすぎ。最後のガミラスへの特攻も、一二を争う事態なのに怒鳴りあってんのがアホだったし、森雪にいたっては痴話っていう。
キスシーンのタイミングとかも、唐突すぎてヤバかったもんな。立場を利用して肉体関係を強要してるみたいな。エロ同人誌の間合いだった。
ラストで出てくる森雪ママ。あの短時間のあいだに、しっかり生殖してたっていうね。日本男児よ、オスであれ!ってことっすかね。戦え!SPACE BATTLESHIP!