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ミッション:インポッシブル3のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.9
 スパイを引退したイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、婚約者のジュリア(ミシェル・モナハン)と幸せな日々を過ごしていた。新人スパイの教育に当っていたイーサンだが、教え子リンジーが誘拐されたことを知らされ、その救出作戦に参加する。しかし救出に成功したと思ったのも束の間、リンジーは頭に仕掛けられた爆弾で死んでしまった。その後、一連の事件の裏に闇商人デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)がいることを知ったイーサンのチームは、デイヴィアンを逮捕すべく、バチカンへと向かった。ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウーと続いた人気シリーズ三作目。そしてJ・J・エイブラムスの記念すべき銀幕デビュー作でもある。TVプロデューサーだった父の影響で、幼い頃から映画業界に憧れていたJ・J・エイブラムスは当初はテレビ業界に進出。『フェリシティの青春』、『エイリアス』や『LOST』等の製作総指揮(時には監督業も)を務めた。その『エイリアス』の大ファンだったトム・クルーズが今作の監督にJ・J・エイブラムスを抜擢し、念願だった銀幕デビューの夢が叶うことになる。

 フィリップ・シーモア・ホフマン扮するデイヴィアンの挑発に乗り、突如サディスティックな行動に出るなど、今作でのイーサンの主人公ぶりはこれまでにも増して危なっかしい。あの飛行機内の場面は、ルーサーの説得によりこと無きを得るが、一番の理由はデイヴィアンを生かしておかなければならない映画的な物語的な理由があったということである。やがて橋の上で襲撃され、真っ二つに割れた剥き出しのコンクリートの上で、ヘリコプターから狙われる絶体絶命の状態になるのだが、唖然とするのは彼が必死で取ろうとしているのは、最愛の妻でも機密物質「ラビットフット」でもましてや仲間でもなく、「武器」だというのだからその大胆な脚本には恐れ入る。ここら辺にアクションが不得手であった若き日のJ・J・エイブラムスの弱点が如実に伺える。

 当初は頭に爆弾を仕掛けられたリンジーの復讐として戦線に復帰したイーサンだったが、遂に愛する妻を誘拐される段階になって、スパイとしての任務以上に、人と人の関係性に向き合った脚本は、次第に熱を帯び始める。映画の冒頭で繰り広げられた拷問シーンがここでは繰り返され、絶体絶命の危機に陥りながら、あっと驚く黒幕が正体を現す。前半のバチカン脱出作戦の拍子抜けするような神業的成功例はともかくとしても、中盤の橋の爆破に始まり、ワイヤーを使った高さのあるアクションは緊迫する。野球ボールを使用した馬鹿馬鹿しいトリックの場面は、中国人が猛烈に怒りそうだが 笑、クライマックスへと向かう物語の根幹には、あくまで最愛の婚約者ジュリアがいる。
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