イトウモ

ユマニテのイトウモのレビュー・感想・評価

ユマニテ(1999年製作の映画)
2.5
妻と子どもを失ったせいで不能らしい刑事と、彼を誘惑する彼の友人の恋人の女、ドミノの心の邂逅を描く。

11歳の少女の強姦殺人事件の犯人を探す刑事。捜査に関わらず、不意に終盤に姿を現した犯人は弱々しく泣き崩れ喘ぐ。刑事は犯人を強く抱きしめ口を塞ぐように強引にキスをする。そこには無垢な子どもを手にかけた残忍な凶悪犯ではなく、自分の身体も思い通りにならないひ弱な人間が一人。これではまるで彼が、ここにはない見えない「悪」という観念に身体を奪われていた被害者みたいだ。

一方、ドミノは刑事を誘惑し、断られて失敗し、途方に暮れてベッドにその裸身をさらして投げ出す。かめらはわざわざ彼女の女性器を大写しにする。そこには性の交わりというロールプレイから解放された、意味のない「ただの身体」がある。デュモンは、強い悪意や衝動的な欲望から解放され、亡者のように脆くなった犯罪者の身体をこれに対応させる。

ただ何も起きない画面を必要以上に長く見せるこの監督の手法は、観客の身体を不随意な肉の牢獄に変えるためのものだ。

感覚を鈍らせ、その鈍感にされた感性に驚きを放つ。映画にプロットはあるが、そこには信じるものを、人生に本来必要なナラティブが失った人たちの生活と、そこに不条理に放たれた唐突な、意味になる前の単なる驚きがある。


ソフト発売当時に見たときほどの驚きは覚えなかった。それは脚本に依存した映画であることの証拠か。また、時世の変化の余波か。その両方か。