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ミツバチのささやきのDのレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
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スペインの名匠ビクトル・エリセは非常に寡作で知られており、本作を制作したのが1973年、エリセが33歳のとき。エリセは本作の1作のみで世界に名を轟かせることになる本物だが、作品から説明は排除され詩的である。以降も10年に1本といったペースで映画を撮っている非常にマイペースなアート作家。3作目から30年の期間が空いた現在、最新作が大絶賛上映中。最初の2作に共通する題材はスペイン内戦の影響下の元、少女の成長における通過儀礼を描くことが挙げられる。本作は、1940年代のスペインの小さな村を舞台に描かれる絵画のように美しい映像表現、謎めいたストーリーに込められた象徴的な意味。ミツバチをはじめ様々なモチーフに死の匂いがつきまとうが、フランコ独裁政権により検閲が厳しい状況下で制作された反体制の意図が込められていて、非常に見応えのある傑作だ。少女アナを演じたアナ・トレントのきれいな瞳を通じてすらも、物語をも投影しているという上質さだ。
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