きみどり

愛人 ラマン/恋人・ラマンのきみどりのレビュー・感想・評価

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名作再訪。

仏領インドシナで困窮生活を送る、フランス人一家。長兄のみ溺愛する母との関係に苦しむ15歳の少女が、倍以上歳の離れた華僑の青年と愛人関係になり…という、まあまあ『エマニエル夫人』的に消費されそうな作品。
ロリコンのスポンジに人種差別のクリームをこってり塗って、仕上げに性差別やら性的搾取、ネグレクトを散りばめてみましたという趣きだった。耽美的に撮ってあるけど、相当に重い。

現地のフランス人社会から疎外され、最底辺の生活を送りながらも白人であることにすがって生きる家庭の娘を、富豪の華僑が金の力で好きにする。妹が彼からもらうお手当で生きていたのに、「中国人と寝た」と荒れる兄。もうどっちを向いても拗らせさんばかり、お腹いっぱい。

デュラスの強烈なミーイズムの毒気に当てられて、若いころはこの映画も原作も好きになれなかった。「お金の介在するセックスだったけど、真実の愛なの…ウットリ」ってそりゃ欺瞞じゃないの、作家の騙りじゃないのと、青臭く考えたりも。でも、心の汚れた大人になってみて思うのは、性愛と金銭は不可分であるということ。人はみな現実の辛さから目を背けるために、なにかしら認知を歪めて生きているということ。

自分の身一つで家族を養ったかつての少女が、美しい物語を書いた。そして大作家になった。多少とも報われて良かったなと思う。
きみどり

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