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トロピカル・マラディのbennoのレビュー・感想・評価

トロピカル・マラディ(2004年製作の映画)
4.7
エナドリ用意してアピチャッポン…
……(๑'-ก̀๑)ネムネム …𓈒 𓏸 𓐍


『人間は誰でも猛獣使いであり、その猛獣に当たるのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。』

冒頭…中島敦の『山月記』の引用文で始まります…。何故かTon Nakajima…敦煌のとん(?!)…。

今作は2部構成…。

前半は…タイの山間の小さな村…森林警備の為、これから奥地へと派遣される兵士ケンと村の青年トンの束の間のBLストーリー…プラトニックで微笑ましい日常の断片を映します…。

タイの街の喧騒とトンの暮らす田舎の村での対比描写も惹かれます…。賑やかな屋台や野外ステージの歌謡ショー…映画館では何やら下半身がモゾモゾ…そして広場でのエクササイズは曲もポップで気分も上がります…。

一方、トンの住む緑豊かな村はBGMが虫と鳥…一気にマイナスイオン…言葉少なに家族で取る食事も目の移ろいが妙に可笑しい…。

そして別れの夜…トンは暗闇に姿を消します…。


後半は突如、メタ演出の『魂の道』(A spirit’s path)…「昔々、様々な生き物に変身することが出来るシャーマンがいました…そのシャーマンは虎に魂を捕えられます……。』タイに伝承される民話が語られます…そしてこれは現代版『山月記』(?!)

前半とは様相も一変…スピリチュアルな精神世界…家畜の牛が次々にいなくなる事件を調査する為、森の奥深くへと入って行く兵士は、全身に刺青を施した不思議な男を目にします…彼の刺青はまるで虎のよう…。

明け方の日差しの差し込む美しい森とは違い、夜の森は恐怖、不安…孤独…。

闇の中で聞こえるのは森のざわめきだけ…死んだ牛の霊を追って行くと…無数の精霊たちが蛍のように1本の木に群がります…なんて眩ゆい満開の蛍の木…。

「私を待っていたのですね…」

そして導かれるように…男は虎と遭遇します…虎は木の上にいて兵士を見下ろします…その画の構図が実に見事…!!

微動だにしない虎と兵士…兵士はつぶやきます…
“Monster, I give you, my spirit, my fresh and my memories…”

(⁎˃ᴗ˂⁎)ƕ-ˀ̥ ˀ̥ ˀ̥ 『輪廻転生』(?!) …『山月記』自体が不条理文学…捉え方は観る側に委ねられます…。

映像に吸い込まれる…とても魅力的な作品です…。


✎︎ YouTube(泰語音声、英語字幕)ですෆ*
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