Omizu

誰も知らないのOmizuのレビュー・感想・評価

誰も知らない(2004年製作の映画)
3.9
【第57回カンヌ映画祭 男優賞】
是枝裕和監督の代表作。主演の柳楽優弥が史上最年少でカンヌ映画祭男優賞を受賞した。国内でも高く評価され、キネマ旬報日本映画ベストワンも受賞した。

静謐なドキュメンタリー・タッチで教育放棄を描いた衝撃作。是枝監督の冷徹な演出が光る傑作。

なるほどこれは素晴らしい。というかこれを評価しないのは無理があるというくらいよく出来た作品。

是枝監督の前半作品はあまり観られていないのだが、今の『怪物』や『万引き家族』とは違う質感がある気がする。今の方が雄弁になったというのかな。それはそれで好きなんだけど、前半作品はとにかく冷徹。

教育放棄された子どもたちがどう生きていくか、そして生きていけないかを描いている。途中出てくる女子高生の描写もよかった。孤独に生きる子どもたちが直面する現実と悲劇。実話ではあるがまるで寓話のように描いているのが素晴らしい。

キャスティングも絶妙で、出番はあまりないがYOUを母親役にしたのがすごい。子どもたちには優しいのがこれまた問題というか。やっていることは鬼畜そのもののはずなのに優しいから離れられない心理を見事に描いている。

そして柳楽優弥。今の俳優で最も顔が好きな人なんだけど、この頃からもう完成されているな。野球のシーンがなんとなく印象に残る。兄として父親のような役割をさせられる一面とは別の側面、つまり普通の男の子として描写される唯一のシーンのような気がして印象深い。

実話ベースの衝撃的な話ではあるが、かなり静かなトーンで語られるので面白いとは言えないかもしれない。しかしこれは評価せざるを得ないだろう。監督の冷徹な美学が冴え渡る傑作。
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