たむ

八月のクリスマスのたむのレビュー・感想・評価

八月のクリスマス(1998年製作の映画)
4.7
10年ぶりくらいに再鑑賞しましたが、制作から時間も経ち、韓国映画の傑作から名作になったラブストーリーです。
1998年の韓国映画は、翌年の『シュリ』を前にした革命前夜のような状態だったでしょう。
本作から翌年に『シュリ』『ペパーミント・キャンディー』、その次に『JSA』が公開されるわけです。
それぞれに直接のつながりはないにしても、同時多発的で今の韓国映画を形作る凄まじいルネサンス期でした。
ホ・ジノ監督のデビュー作で、新人監督らしからぬ小津·成瀬を思わせる達観した構成、新人監督でしか撮れない狂気もにじませます。
特に後半のヒロインの行動は、共感レベルを超えて狂気の沙汰にもみえます。
この狂気が多くの韓国映画のヒロイン像を繋げているようにも思えてきます。
とにかく省略が多いので、リメイクした方がうまい映画は出来るでしょうが、このときにしかできない映画表現でもあります。
しばらくぶりの鑑賞なのですが、観てる間いろいろな事を思い出しました。
すれ違いの激情、ある種の理不尽さへの葛藤と抵抗、挫折、極端ながら韓国映画史上外せない映画ですね。
たむ

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