カタパルトスープレックス

けだもの組合のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

けだもの組合(1930年製作の映画)
3.5
日本の「コント」にも大きな影響を与えたマルクス兄弟の二作目の映画作品です。

マルクス兄弟の魅力はグルーチョ・マルクスの高速トークとハーポ・マルクスの頭のおかしいアクションです。この二人が作り出す不条理劇がマルクス兄弟の映像作品の魅力となります。

しかし、チャップリンにもない、キートンにもない、マルクス兄弟だけが持っている武器はグルーチョ・マルクスのトークです。だから、サイレント映画時代ではなく、トーキー時代から人気が出たんだと思います。

本作で一番有名なグルーチョ・マルクスの台詞は"One morning I shot an elephant in my pajamas"です。日本語に訳すと「ある朝、パジャマ姿のままで象を撃ったんだ」です。なるほど、朝に象を撃ったのか。パジャマ姿で。でも、なぜパジャマ姿でわざわざ?わからないですよね?

しかし、その後に"How he got in my pajamas, I don't know."と続きます。日本語に訳すと「なんで象が私のパジャマを着ているのかはわからない」です。ああ、なるほど!つまり、最初の"One morning I shot an elephant in my pajamas"は「ある朝、パジャマ姿のままで象を撃ったんだ」ではなく、「ある朝、私のパジャマを着ている象を撃った」だったんです。

"One morning I shot an elephant in my pajamas. How he got in my pajamas, I don't know.(ある朝、私のパジャマを着ている象を撃ったんだ。なんで象が私のパジャマを着ていたのかは分からないが)"はさり気ないですが、英語の前置詞"in"を使ったなかなか高度なギャグです。英語圏の人はグルーチョ・マルクスが高速で繰り出すこのようなスマートなギャグに参ってしまうわけです。これ、日本語にするのは至難の技ですよね。マルクス兄弟がなかなか日本で評価されないのはこんなところにもあると思います。

むしろ、ハーポ・マルクスの頭のおかしいアクションの面白さの方がわかりやすいですよね。ただ、アクションに関しては日本のお笑いもだいぶ進化したので、マルクス兄弟の「お笑い」は教科書的ではありますよね。吉本新喜劇の方が面白いかも。