手話が出てくる映画がすきなんです、といったのはだれだっただろう。
これは聾唖の両親を持つ少女ララのものがたりである。幼いころより両親の〝通訳〟として生きてきた彼女は、反発するように音楽の道へと救いを見出だしていく。それは両親が一生感じることのできない世界だった。
今夜はきれいな夜だと父はいう。雪はどんな音を立てて降るのかと娘に問う。娘は雪に音はなく、雪はすべての音をのみ込むのだと教えてあげる。雪が降ると世界が沈黙するのかと驚きながらも、それがすてきだと父はいう。そんな何気ない父娘のやりとりがすきです。手話が演出として効果的に使われており、とりわけ窓越しや鏡越しに交わされる手話が印象的でした。
ビヨンドサイレンス――沈黙を越えること。音楽もまた然り。どうか、あなたの心のなかにある音楽を感じてほしい。