爆裂BOX

フェイズ IV/戦慄!昆虫パニックの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.8
砂漠の研究所で、急激に増殖した蟻の調査をする生物学者たち。同じ頃、付近の一軒家を蟻の大群が襲い、人間の体内にまで侵食していく。科学者たちはケミカルダストで蟻の掃討を図るが…というストーリー。
タイトルデザインを数多く手掛けたソール・バスの初監督作である高い知能を得た蟻と人間の戦いを描いたカルトSFです。
生物学者のハッブスと助手のレスコはドーム型の研究施設で急激に増殖した蟻の調査をしていた。ある日、付近に住むエルドリッジという一家が蟻の大群に襲われて、唯一生き残った孫娘のケンドラは施設に運び込まれる。アリは殺虫剤で殺されるも、すぐに耐性を持った個体が生まれ、蟻たちは蟻塚で研究施設を覆い、施設内の熱の行き場を奪う、という内容です。
まず、タイトルから想像される様な蟻が人を襲いまくる昆虫パニックという暗示ではなくて、アート性の高い映像で贈るサスペンス映画という感じですね。登場人物も限られていて、6人しか登場しませんし、主要登場人物は3人だけです。舞台になるのもドーム型の研究施設内とその周辺だけなので、スケールの大きいパニック物期待すると肩透かし喰うと思います。
何といっても本作の見所はどうやって撮ったのかと思わせる蟻たちの描写ですね。超接写で丹念に撮られた蟻たちの生態描写はネイチャードキュメンタリー思わせる部分ありますし、蟻たちに演技つけて撮影したとしか思えないシーンもあって引き込まれますね。特に死んだ蟻たちの死体並べてその前で並んだ蟻たちが頭を垂れて黙禱してるように見えるシーンは本当にどうやって撮ったんだろうと思いました。今作の蟻たちは巨大化したりはしませんが、宇宙で起きた天変地異の影響で高い知能を得ており、種族間での争いをやめて一つになって天敵であるクモなどの動物を排除し、増殖をしていきます。ハッブスに蟻塚を爆破されて倒されると報復の様に周辺の一軒家を襲って倒壊させたり、撒かれた殺虫剤を女王蟻まで届けて耐性のある個体誕生させたり、蟻塚で太陽光線反射させて研究所を熱線攻めにしたり、パソコンの機器に侵入してダメにしたりエアコン壊したり、メッセージを送ったりとその高い知能を見せつけるような攻撃方法の数々も見応えありました。殺虫剤の欠片を命を懸けてリレーのようにつないで女王蟻の元へ届けるシーンはその一つの目的の為に命を懸けて団結していく姿はちょっと感動した(笑)自分が見落としたのかもしれないけど、何でエアコンの中にカマキリいたんだろ?
人間側も高音場放射して蟻塚破壊したり、メッセージを読み取って自分達もメッセージを送ろうとしたりししますが、ハッブスは殺虫剤撒いたせいで逃げこもうとした住民が死んだ姿を見ても特に何とも思わず、ケンドラの為に救助を要請するようレスコから言われても研究を続けたいために連絡しなかったりとマッドサイエンティストっぽい所もあって、レスコは冷静に事態に対処しようとしますが、この二人のかみ合わない姿が女王を頂点として一つになって人間に挑んでくる蟻たちとの対比になっていると感じられるのも良いですね。蟻に噛まれてその毒が回って来たのかドンドン錯乱していくハッブスの存在が派手なシーンなく地味に静かに進む物語の中でカンフル剤の様になっていたんじゃないかな。研究所に保護された少女ケンドラを演じたリン・フレデリックの可憐な存在感も華を添えていました。
死体の手の穴から蟻たちが這い出してくるシーンや穴に落ちたハッブスの上から蟻たちが降り注ぐシーンは気持ち悪くてインパクトありました。
ラストはハッピーともバッドどちらとも取れますね。新たな支配者の新たな価値観を伝えるものになったんだろうか。
全体通して静かな物語ながら、蟻たちの名演技や芸術性ある映像で引っ張っていくカルトと呼ばれるのも頷ける作品でした。