鷺宮テラス

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日の鷺宮テラスのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

まるで小さい頃に読んで心に残っている本を読み返したような後味の作品だった。

少ない台詞の中でもインド周辺の歴史が伺えるような箇所がたくさん散りばめられて。

主人公のパイが通っていた学校にフランス語の授業があるのは彼らの街ポンディシェリは1954年までフランスの植民地だったから。ラジオに流れたのは非常事態宣言によるグジャラート州とタミル・ナードゥ州が政府下に置かれた報道でこれは1975年から77年までガンディー首相による非常事態体制(反対派を次々と逮捕し憲法を好き勝手に改正、政府に権力を集中させた)があったのだと知れた。

現在のインド首相のモディさんはこの作品が公開された時期はそのグジャラート州の"首相"だった。


インドの国旗は三色旗で一番上のサフラン色はヒンドゥー教、一番下の緑はイスラム教、中央の白はキリスト、ユダヤなどその他の宗教を表している。すべての色の宗教に帰依したパイは、インド全体の宗教観、宇宙観を含んでいるような包み込むような、国旗の象徴として(宗教間対立の多い)インド、そして世界に問いかけている存在なのだと感じた。

日本も登場することでどのような人も考える余白のある作品になっていると思えた。

過酷で残酷な話なのに優しくて温かい作品は初めてでなんじゃこりゃーなんだけども、パイ少年時代のアユ・タンドンくん、青年時代のスラージ・シャルマさん、そして大人になってから物語を語る役のイルファン・カーンさん3人の表情が素敵だったからだと思う。

2020年4月29日に亡くなられた(米国の速報ではCoronavirus infection と書かれておりました)イルファン・カーンさんのご冥福を祈って。
彼が涙を流す場面が好きで好きでたまらない。


3Dブルーレイ大事に持っています。
鷺宮テラス

鷺宮テラス