垂直落下式サミング

ジュラシック・ワールドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ジュラシック・ワールド(2015年製作の映画)
4.5
『ジュラシックパーク』が20年前の映画になってしまったパラダイムにおいて、映画業界の現状にリンクするものがある作品。
映像技術の進歩によって、観客はCGで作られた恐竜がまるで生きているように動いても驚けなくなってしまった。CGなら怪物も魔法も人間も作れてしまう。つまり、我々観客はこの映画でいう「動物園で象をみるように恐竜をみる子供たち」だ。
今回の目玉であるインドミナスレックスは、様々な生き物をハイブリッドした人工恐竜。観客を満足させるために、ひとつの作品に様々な要素を足していくハリウッド大作映画の現状に重なっている。
ストーリーも、過去作品に含まれていた要素をいくつも取り入れており、子供の冒険、資本家の道理を欠いた利益追求、肉食恐竜同士の戦闘、怪獣総進撃と、なんとも律儀な姿勢の続編である。この映画自体がインドミナスレックスなのだ。
この人造キメラ恐竜という設定を受け入れられるか心配だったが、やっぱりカッコよさisジャスティス!で結果的に大興奮。
コイツが隔離されているのは、あまりにも凶暴すぎて協調性というものが欠如した結果、どんな恐竜にも牙を向ける性格になってしまったからだという。そんな危険なやつにイカの保護色とか、カエルの体温変化とか、管理する上で不都合しかない特性を盛ってしまうのは、ほんとダメ。誰かが余計なことして大惨事になるの、相変わらずジュラシックパークだなぁって感じ。
恐ろしいのは、まだ生まれたばかりという設定なので、ほっといたらもっと成長していて、ティラノサウルスとかですら歯が立たないくらいにデカくなってた可能性もあるということ。戦闘シーンは、デカい生物に襲われるという脅威を切実に描いており、「デカさが正義」というアメリカンマッチョイズムを強く感じる。
マッチョと言えば、主人公クリス・プラット。新キャラのヴェロキラプトルの調教師オーウェンは、過去作に出ていた主役たちとはタイプの違う正統派ヒーローで、ストーリーのアクション性を高めて盛り上げる。
ガソリンをかぶって匂いを消すなど機転の効かした生き残りかたや、ラプトル・スクワッドとの主従関係で繋がった連携も素晴らしかった。今まで、残酷な野性淘汰の象徴だった捕食獣をあんな風に扱えるんだ。四姉妹はブルー、チャーリー、デルタ、エコー、そんで、アルファはオーウェン。最後、助けにくるとこ泣きそうになった。ラプトルに胸を射たれるとは。
そして、人口亜種が自然界の正統な捕食者に倒されるラストに象徴されるように、作品自体も「オリジナルよりは面白くないけどなかなかみれる」という空気を読んだ立ち位置に落ち着いている。