垂直落下式サミング

サイクロプスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

サイクロプス(2008年製作の映画)
2.5
ロジャー・コーマン製作のギリシャ神話に登場するの一つ目の巨人サイクロプスを主役にした二次創作的なモンスター映画。怪物のCGはお世辞にもレベルが高いとは言えないが、古代ローマの石畳や闘技場を再現したセットや美術にはかなり金がかかっているように思える。タイトルクレジットの古代ローマの町並を見下ろしたCGの出来がなかなか格好よくて、『グラディエーター』とまではいかないが『テルマエ・ロマエ』くらいには頑張っている。
開始早々サイクロプスが登場し人間が襲われるシーンが描かれるのも、モンスターパニックとして景気がいい。このジャンルは、モンスターの情報を小出しにしながらストーリーの推進力をを持続させるものなので、映画開始と同時にモンスターの全体像が明かされるというのはなかなか実験的。
そんなわけで前半はサイクロプスが主役の怪獣映画として進行し、物語の早い段階で怪物が驚くほどあっさりと捕獲された後は、暴君の圧政を見かねた剣闘士たちが皇帝に反逆を企てる革命ものへと変化していく。というのも、この映画のサイクロプスはサイズも意外と小振りな上に、普通の人間で組織された討伐部隊によってどうこう出来てしまう程度の怪物なので、モンスターが大暴れする場面をたくさん見せてくれるB級作劇としてみると肩透かしを食らう。
それでいて戦士達の人物描写にも然程気が利いているとは言えず、登場人物の誰かに感情移入して観ることが出来ない視点の定まらない作劇も物語を冗長にさせている要因だ。映画全体の分量として人間のセコいゴタゴタにイレギュラーな存在としてちょっとだけサイクロプスが絡んでくる感じなので、規模の小さなミニマムな印象の映画だった。
いかにも作り物然とした人工的な動きの怪物が、のそのそと安っぽい古代ローマ市内を徘徊するシーンは、往年のストップモーション作品のようで嫌いになれない。望まずして人間社会に連れてこられた怪物が結局最後には殺されてしまう話ということで、どうしても『キングコング』を連想してしまう。