『クリムゾン・ピーク』
原題Crimson Peak.
映倫区分R15+.
製作年2015年。上映時間119分。

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が(ってホンマ儁秀の監督だと今作品で再確認出来)、『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『アベンジャーズ』のトム・ヒドルストン、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャスティンら俳優共演で描くダークミステリー。
今作品の製作当初ベネディクト・カンバーバッチとエマ・ストーンがキャストされましたそうで、トム・ヒドルストンとミア・ワシコウスカは、それぞれギレルモ・デル・トロの第二次のキャスト選択だったそうっす。
イタリア・ホラー映画黄金時代を築いた1人として知られているマリオ・バーヴァの作品テクのように視覚的にこの映画を見せたかったと後に語ってます。

10歳の時に死んだはずの母親を目撃して以来、幽霊を見るようになった女性イーディス。
父親の謎の死をきっかけに恋人トーマスと結婚することになった彼女は、トーマスや彼の姉ルシールと一緒に屋敷で暮らしはじめる。
その屋敷は、冬になると地表の赤粘土が雪を赤く染めることから
『クリムゾン・ピーク』と呼ばれる山頂にあった。
余談ながら屋敷は全て実際に建てたそうです。
しかし、スタジオにスペースを作るために、撮影の最後に取り壊さなければならなかったそうです。
ある日、イーディスの前に深紅の亡霊が現われ、
『クリムゾン・ピークに気をつけろ』と警告する。。。

ゴシック・ホラーを十八番とするギレルモ・デル・トロのお家芸、ヲタ芸に近い鬼才ならではの凝った今作品。
多彩な映画作りをするギレルモ・デル・トロの今作品は、ゴシック・ホラーを存分に楽しめました。
この作品は、オールドスクール・ホラーの色合いを多く取り入れたラブストーリーやけど、厳密にはゴシック・ホラーではなく、ホラー要素を含むゴシック・ロマンスと云っても過言じゃないかな。
因みに、オールドスクールてのは（通常良い意味で）古風または昔風、昔ながらの価値観やスタイルなどを意味する。
特に、音楽や映画関係分野などでは、新たなスタイルが登場した際に、従前のスタイルを尊重するものを指して、この語が様々な文脈で用いられることがあり、綴り字も『school』に代えて『skool』が用いられることがある。
個人的に近年で観た映画作品で美しく様式化されたホラー映画の一つでした。
本作と過去の作品においてそれが強調されていることから、デル・トロの焦点であったことは明らかなんかな。
予告編にあるような絶え間ない恐怖を期待して視聴に臨んだし、怖さに関してはあまり感じなかったかな。
今作品は人物関係に重点を置いており、ホラー要素も随所に盛り込まれているが、ごく一部の場面を除いては、この映画は『怖い』のではなく、主にキモくて不気味でした。
しかし、視覚的にこの映画が非常によく表現されていることは間違いなく、デル・トロの独特なビジュアル・スタイルが全面にプッシュプッシュと押し出され押し出しで圧倒されました。
家の風景やディテールの美しいショットがたくさんあり、それぞれのショットをより面白くするために明るい色の小さなヒントが使われてる。
ゴシック建築の要素や装飾が、全体的に不気味な雰囲気も巧く作り出されてたし、また、不気味な映像もあるけど、主に昔ながらの不気味で神秘的なトーンでまとめられてて、それは映画のほとんどで続き、ホラー映画の緊張感を台無しにするジャンプスケアよりも成功していることが証明されてます。
実際に怖い場面はほとんどなく、不気味なイメージはキモい(🐜やら)から想像妄想に訴える不気味なものまで幅広く、この非常にキャラにフォーカスした映画で、もう少しホラーが欲しかったという印象は否めないかな。
前述したように、この映画はキャラの成長と人間関係に偏っており、それが映画のかなりの部分を占めてたけど、それでも不気味な色調とうまく調和している。
このように登場人物に焦点を当てたことで、ホラー要素と登場人物の間につながりが感じられ、あちこちにある文脈が両者をうまく結びつけていた。
せや、登場人物の紹介と育成が非常にうまくいっているので、脚本と演技を通して全員の個性がよく表れていると言わざるを得ません。
トム・ヒドルストンは、その経験を活かしてキャラクターに個性を与えており、その演技は際立ってたし、ミア・ワシコウスカは、典型的なホラー映画の被害者を演じることができたが、彼女のキャラは、他の多くのホラー映画の女性主人公よりも強く、意欲的で、彼女の背中を押すことができたと思います。
映画全体のプロットはまだミステリアスで、どのような方向に進んでいくのか食い入って展開を愛でた。
しかし、映画の後半で明らかになる大きな事実については、かなり予想がついたと云わざるを得ないかな。
今作品は、大きな絵が何であるかについて、あちこちに多くのヒントを投下しますが、映画がどこに向かっているのかはかなり明白でした。
100％何が起こっているか分かっていたわけじゃないけど、映画の中盤あたりで起こっていると思ったことは、結果的に正しかったかな。
そのため、後半で説明文を投げかけてくるようなシーンはインパクトがなく、自ずと理解することができたと思います。
結局のところ、この映画は、ジャンプ・スケアやホラーに焦点を当てた映画を望んでいる人は、間違いなくアレって思うかな。
しかし、ゴシック・ロマンスに焦点を当てた不気味な色調と映像は、デル・トロのスタイルと相まって、非常によくできたスタイルの『ホラー』映画になっていると思います。
もう少し不気味なものではなく、怖いものがあればと、個人的には完全に今作品に殺られてたかな。



………………………キリトリ……………………

此より、少しネタバレに抵触いたしますので自己責任でお読みくださいマシマシ🙇‍♂️。

後半にルシールのセリフに

"But the horror... The horror was for love. The things we do for love like this are ugly, mad, full of sweat and regret. This love burns you and maims you and twists you inside out. It is a monstrous love and it makes monsters of us all."
愚訳kuu
しかし、恐怖は... 恐怖は愛のためだったわ。
このような愛のためにすることは醜く、狂気で、狂おしい後悔に満ち溢れてる。
この愛は、人を燃やし、傷つけ、内側からねじ曲げる。
それは怪物のような愛で、私たちみんなを怪物にしてしまうの。

とあった。
小生は、愛は愛であり、それを測る真の尺度はないと思てます。
それは包括的な感情であり、すべての人が、特定の人、動物、またはものに向けられるべきではない。
If you love someone too much, you become a beast.
過ぎる愛は、人を獣にする。
ゴーストよりも怖い獣に。
愛の最大の敵は、排他性といえるんかな。
愛情を注ぐべき相手を排除し、不利益をもたらすような『一人』を選んだ瞬間に、愛が腐敗してしまうことがある。
それを今作品は、ゴシックホラーの中で見事に描いてる。
すべての人が無条件に何かを愛し、問答無用で与える能力を持っているわけやないが、それこそが愛の本質かな。
しかし、それは愛そのものの本質であるし、すべての人が、愛が降り注ぐときにそれを処理する能力を持っているわけでもない。
どちらも、愛の問題ではなく、愛が多すぎるということもない。
ルシールが持つ愛を排他ではなく融和を選んでいたなら、きっと聖女となれたんかなぁと。
愛ってのはホント難しい。

　母親の葬式、右手が血で濡れた女の姿。幽霊を見ることができるイーディス（ミア・ワシコウスカ）が初めて見たのは10歳の時、棺に入れられた死んだ母親の霊だった。嵐の夜、ベッドでうたた寝する彼女は廊下に母親の霊を見る。不気味な動きで近づいて来た母親の亡霊は、「その時が来たら、クリムゾン・ピークに気を付けろ」とイーディスに警告を発する。それから14年後ニューヨーク州バッファロー、大人になったイーディスは実業家の父カーター（ジム・ビーヴァー）と2人で暮らしていた。周りの同じ年頃の娘たちがファッションや異性に関心を持つ中、処女小説の執筆に夢中になっている。幼馴染で医者のアラン・マクマイケル（チャーリー・ハナム）は、社交界では異端児扱いされている男だが、彼女に惚れていた。ある日、カーターの会社にイギリスから準男爵の称号を持つトーマス・シャープ（トム・ヒドルストン）という男が現れる。彼は自身の発明した粘土掘削機への投資を持ち掛けるが、カーターはトーマスの物腰や手つきに不信感を抱き投資を拒否した。しかし、イーディスは自身の小説を褒める彼に次第に魅かれていく。カーターは情報屋のホーリー（バーン・ゴーマン）を雇いトーマスと彼の姉ルシール（ジェシカ・チャステイン）の身辺調査を依頼し、素性を知ったため2人に手切れ金を渡しイギリスに追い返す。しかしイギリスに発つ日、とんでもない事件が起こる。

　一度も異性を好きになったことがないイーディスは、社交界の席で公衆の面前で不意に恋に落ちる。ピアノの名手である彼の姉ルシールの手引きにより、ワルツを踊った彼女は満更でもない表情を見せる。だがその姿を苦々しく見ていたのは、彼女の唯一の肉親である父親だった。姉弟の身辺整理をしていた父親はそこで2人のある「秘密」に触れてしまい、父親が姉弟と交わした2つの約束は最悪な結末を迎える。天涯孤独になってしまったヒロインは、アメリカから海を渡りイギリスへ。夢にまで見た新婚生活、開け放った屋敷は処女作『クロノス』のように屋根から光が漏れ、粉雪がサラサラと舞う。不気味なまでの静寂と、姉弟の2人には手持ち無沙汰な屋敷の広さ、そして廊下に掲げられた人相の悪い母親の巨大な肖像画、トーマスに絶対に行ってはならないと言われた地下室など、いかにも曰くありげな空間設定にギレルモ・デル・トロの刻印が滲む。トーマスの母親と同じ深紅の指輪、犬がどこかから持ち込んだ深紅のボール、白いドレスを纏ったイーディスの吐血、そしてヘルボーイのような深紅色をした亡霊の絶叫と全てが赤のイメージで貫かれたモチーフは、やがてトーマスの口から「クリムゾン・ピーク」（深紅の丘）の言葉を聞いた時、ヒロインの心を震わせる。その時白いドレスはイギリスの真っ白な雪に代わり、真っ白な雪は深紅の紅に染まる。ラスト15分の気の触れた女の狂気には戦慄が走る。今作ばかりはミア・ワシコウスカのヒロイン以上に、ジェシカ・チャステインが鮮烈なインパクトを残す。

裕福な家庭に育ったお嬢様が財産目当ての詐欺師に騙されるオカルトミステリー作品。
ギレルモ・デル・トロが監督・脚本を担当、ミア・ワシコウスカがヒロインを演じ、トム・ヒドルストンとチャーリー・ハナムらが共演。

ニューヨーク州のバッファローに住むイーディス（ミア・ワシコウスカ）は、裕福な家庭に生まれ育った世間知らずの箱り娘で、10歳の時に母親の死をきっかけに幽霊が見えるようになる。
ある時、イギリスの準伯爵を名乗る青年トーマス（トム・ヒドルストン）が大富豪であるイーディスの父親に掘削機の出資の依頼に訪れる。
父はトーマスが投資に値しない男であることを見抜き出資を断る。
そこでトーマスは財産目当てにイーディスを誘惑し、彼女をまんまと恋の虜にしてしまう。
父が突然死すると、トーマスはイーディスを騙して結婚詐欺を行い、イングランドにある荒れ果てた屋敷で彼の姉と三人で暮らしはじめるとともに、イーディスに財産を貢がせる。
しかしその屋敷には秘密が隠されていた。
そしてイーディスが全財産を失いかけた時、屋敷に幽霊が現れ……　　

幽霊が怖くない不思議な世界観のファンタジー作品です。
ヒロインを演じるミア・ワシコウスカが美しい一方で、世間知らずで詐欺師に簡単に騙されてイライラです。
さすがに後半は彼女もおかしいと気付き、それ以降はハラハラしながら楽しめた。
特に女同士のバトルに注目です。
ギレルモ・デル・トロ監督の作品らしく、衣装や映像が凝っていて、独特のダークな世界観を味わえます。
ちなみにクレムゾン・ピークとは、露出した粘土が白い雪で覆われた大地を赤く染める”深紅の丘”のこと。
ラストで大地はさらに赤く染まります。

「感情に縛られた幽霊もいる　衝動　喪失　復讐　愛　彼らはさ迷い続ける」　　

2022.5　地上波フジTVで鑑賞（ミッドナイトアートシアター・字幕：林完治）

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