レインウォッチャー

ゼロ・モティベーションのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

ゼロ・モティベーション(2014年製作の映画)
3.5
イスラエルの軍事基地に勤務する女子兵士たちの日常、そしてちょっとしたシスターフッド。
兵士といっても彼女たちはアシスタント系の事務職で、職務内容はいわゆる派遣のオフィスワークと変わりなく見える。お茶汲み、紙仕事、掃除、お茶汲み、紙仕事、掃除。ただ、傍に銃と砂漠があるだけだ。

だから、毎日の悩みもごくありふれている。都会の拠点への転勤に憧れ、とっとと処女を捨てたいと画策し、意識高い御局上司に辟易する。
しかし、ありふれているからこそ真剣だ。そこには確かに想像できる退屈や葛藤、つまり体温があって、場所も立場も遠い彼女たちが近しい誰かのように感じられる。

以前、この日本にも『南極料理人』なんて映画があったことを思い出す。南極基地での暮らしを可愛らしく描いた作品だけれど、孤立した極限環境と思われる場所にも繰り返しから生まれる日常があることに気付かせてくれるものとして共通点がある。

もちろん、今作のもつユーモアはもっと黒いし(PCゲームのマインスイーパ=地雷除去の世界記録に挑戦してるとか)、時折顔を出す背景はやはり深刻といわざるを得ない。
戦争ですら、何十年いや何世紀も常態化しているようなこの地域にとっては惰性で続けるルーティーンワークのようなものだ、みたいな風刺的な解釈もできるだろう。(この手のお仕事は、実は誰かひとりが最初に止めるだけでなくなるものだったりする)

でも、やはりこのような作品のもつ存在意義、あるいは効能には侮れないものがあると思う。なぜなら、大きなものから小さなものまで、多くの争いは他者を《異物》と見なすことから始まるからだ。

遥か向こうにいる彼女たちも同じような日々を生きていること、もちろんそれだけで何でも解決できるなんてお花畑脳では(残念ながら)ないけれど、ずっと変わることのない一歩目であることは確かだと信じている。