垂直落下式サミング

インフェルノの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

インフェルノ(2016年製作の映画)
3.5
『ハドソン川の奇跡』と続けてトム・ハンクス主演作を二本続けて鑑賞。『ダ・ヴィンチ・コード』『天使と悪魔』に続くシリーズ第三作目。おなじみ宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授が、細菌兵器の使用を目論む天才科学者の陰謀に迫っていくサスペンススリラーだ。
地球の人工増加を危惧した大富豪で科学者のゾブリストは、人間を間引きするため黒死病の大流行を再現しようとバイオ兵器“インフェルノ(地獄)”を開発し、全世界に人為的パンデミックを起こそうと企む。
そんなわけでラングドン教授が美術品に残されたヒントを辿って、恐ろしい大量殺戮計画を未然に防ごうと奮闘。空前絶後のアツい世界不思議発見ミステリーが展開するのだ。
当シリーズには、美術品や古文書になぞらえた事件を起こす悪の組織が毎回登場するのがお約束。前回の「七つの大罪」に「聖杯伝説」ときて、今回は世界的ラノベであるダンテの「神曲」がモチーフ。今回の敵は自分の作ったものを地獄と名付けるあたりかなり痛々しくて、「世界は一回ぶっ壊さなくちゃならない。地獄の果てに救済があるんだ」という主張も過去三作中最も中二的でエモく、普通の人間が関与できる領域を越えた次元の問題について真剣に悩んじゃってる感じが可愛らしい。ヴィジュアル面ではVFXがいい仕事をしていて、ラングドンが悪夢にみる地獄の造形のおぞましくて不気味ながらも神秘的な表現が素敵。色合いも禍々しく映画館ならではの壮観な映像を味わえる。
全体としては、暗殺者からの逃走劇から形のない時限爆弾をめぐるタイムリミットサスペンスへと変化していくミステリー作品としてある程度の面白さは担保されているが、アクションシーンについては還暦をむかえたトム・ハンクスには流石に荷が重いようで、おじいちゃんが老体に鞭打って逃げ回る姿はみていられなかった。
前作の『天使と悪魔』では希薄だった『ダ・ヴィンチ・コード』の旅行感・トリップ感が戻っていて、イタリア観光映画として親切。美術品も多く登場するので、大人向けインディ・ジョーンズとして楽しめる映画だった。