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アーフェリム!のギルドのレビュー・感想・評価

アーフェリム!(2015年製作の映画)
4.4
【暴言の根幹は縦割り社会の摩擦にあり】
地主の金を盗んで逃げた奴隷を追う法執行官と息子を描いたヒューマンドラマ映画。

JAIHOで初ラドゥ・ジュデ作品を見ました!
19世紀のルーマニアを舞台にロマ民族を奴隷として扱ってきた歴史を風刺したコメディ・ドラマで、ドゥニ・ヴィルヌーヴの作家性にブラックユーモアを掛け合わせた作品に感じました。

「社会に抗うも、社会のシステムの中では駒・歯車として逆らえない」「世界は綺麗に見えているけど、裏には縦割り社会が存在してその受難を受け入れる」…がドゥニ・ヴィルヌーヴの主題の一つだと思う。本作はそういった要素を踏襲しつつも、軋轢をブラックユーモアに描くところに魅力があると感じました。

法執行官は至る所で暴言を吐き、「公正になる」と謳うもコレラと思われると態度を思い切り変えて罵倒したり、外国人や貴族へ本音と建前を使い分けるペルソナを実行する「手のひら返し」を平然とするクズをします。
当初は救いのなさを感じるけれども、物語が進むにつれてその「手のひら返し」する行為の裏側の不平・軋轢に笑いながらもキレてる、というオーラに徐々に変わるのが魅力的に感じました。

同じ穴の狢、同じ釜の飯を食う、というのが似合う映画で19世紀当時の奴隷社会を風刺した映画ではあるが現代社会にも通ずるものが幾つか存在して現実と地続きにして、でもユーモア溢れるタッチに昇華したのは面白かったです。

この映画で印象的だったのは「役職ごとに人間の暴力性を孕んでいるけど、そこに摩擦が生じている」ことで、それが顕になるのが司祭と法執行官のやり取りだと思う。
冒頭には司祭と法執行官とのやり取りがあって、猫を被る法執行官が垣間見える。けれども帰路の途中で見る人形劇では司祭に暴力を振るう姿に法執行官も民衆も笑っているギャップが見える。
行きで司祭と法執行官が出会った野道も、帰りでは捕まえた奴隷を担いで司祭と同じ立ち振る舞いを法執行官が行う。
ここに、役職ごとに暴力性を孕んでいるというか「不平不満」の摩擦から人間は徐々に攻撃的になる人間社会のコミュニケーションそのものを描いているのが面白かったです。
人間を馬車の馬のように歩かせる姿と馬車に乗る姿をわざと同じ絵面に乗せる姿も相まって、奴隷のように人を動かす行為を様々な形で投影して更に現実社会に地続きさせるのが強烈でした。

そんな摩擦や「公正さ」であることは文字通りになるのではなく、「情を与えて社会に抗っても駒として逆らえないどうしようもなさ」に仕方なく「公正」に振る舞う抑圧を見せた傑作でした!


ラドゥ・ジュデ作品を見たくてJAIHOに登録して、近日中に「I Do Not Care If We Go Down in History as Barbarians」も配信されるのでそれも見ようと思います!
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