10円様

バービーの10円様のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.2
 アメリカで脅威的なヒットになってますね!おそらく今年No.1になるのではないでしょうか。今後マーベルズも控えていますがこの数字に並べるとも思えないし…
 アメリカで「バービー」と同じ週に公開されたノーラン監督の「オッペンハイマー」。こちらもヒットしてましたね。何でも「オッペンハイマー」を観に来たお客さんの8%は【バービーを観たかったが満席だったのでこっちにした】という理由があるのが調査によって判明しているとの事です。

 当初はねぇ〜劇場に足を運ぶ予定はありませんでしたが、そんな社会現象を聞くと品定めしたくなりますよね〜あとGoogleでバービーを検索するとピンク色になるってのが地味に意欲を引き出させました。色を変えるだけなのに効果的な宣伝だなぁ。やられましたよ。

 バービーの映画化って、たぶん一昔前にやっていたらバービーを完全に擬人化させて、一つの舞台で日常を描くシットコムのようなシンプルなものになっていたと思うんですよね。やはり本作はとても現代的な映画化で、テーマをかなり盛り込んでました。
 正直バービーランドと人間界が存在しお互いの一部の人間はそれを知っていたり、人間界でのバービー人形の扱われ方でランドのバービーにも変化が生じる二つの世界のリンク部分は説明不足すぎて意味が分からなかったですが、まあスルーしても良いかなとは思います。

 本作で最も興味深かったのが「バービーはステレオタイプの良き女性像の象徴」とも言うべき批判を劇中でサラッと言及してた所です。スタイルが良くて美人で何でも出来る。美の基準を押し付けてしまってるんですね。それが多様化に伴い進化して行き、小柄だったりするタイプは登場したらしいのですが、映画に出てくるようなラージサイズバービーってのはあまり見た事がないような…

 そしてあんまり有名では無いんですが、アメリカの19歳の女性の標準体型でリアルを追求し作られたラミリードールってのもあります。これは制作者のニコライラムはアンチバービーを公言してますね。Disneyに対してのドリームワークスみたいな?それが思った以上にぽっちゃり体型なんですよね。しかもニキビやそばかすまであるタイプのものも。あれが標準かと言われれば確かにバービーは細すぎて美しくルッキズムの権化なのかも。そこを目指すのは酷な事だな…

 あと日本のリカちゃん人形。香山リカちゃんは天真爛漫で多くの男性と恋をしてる(11歳なのに!)んですが、バービーって60年以上ケン一途なんですってよ。しかもバービーの方がケンにぞっこんらしく映画はそこを大きく脚色してました。2004年に破局したんですが2011年にはよりを戻したとの事。
 なんかこの貞操観念もリカちゃんとバービー逆じゃないか?と思ってしまう…つまり美しい女性の条件として不貞を働かず1人の男に尽くすべし。なんてのもあったんでしょうね。
 映画はケンがバービーにぞっこん!バービーはいつも彼のアタックを回避。やがて落ちてゆくケン…そして彼が人間界から持ち帰った厄災とは?
 はて、このパートはグレタ、ノアカップルはどのような気持ちで脚本を書いていたのだろうか…
 なんて事を知ってから観ると面白いぞ、この映画は。
 だいぶコメディに振ってる割には所々で泣かせるんですよね。フェミニズム、アンチフェミニズム、ジェンダー、ルッキズム、利権運動などは描かれているものの、グレタカーウィグとノアバームバッハが本当に描きたかった事は、人形と持ち主の間に生まれる愛情だったり、人形の作り手が込めた魂の話だったりするのではないでしょうか。
 
 映画の冒頭。女の子が投げた赤ちゃん人形が空中でバービーに変わります。これは2001年宇宙の旅の冒頭のオマージュで人形文化の目覚めを表しています。その他にも名作映画のオマージュがちらほらあった気はしますね。
 NHK教育番組のセットみたいな作り物感、嘘くささ満載な世界はやけに可愛らしくて良き良き😊サラッと挿入されるアニメーションのエフェクトもあまり移動しないカメラも良かったです。それに何といっても着せ替え人形ならではの衣装の数々!マーゴットロビーは何着ても似合うんだから凄いですよね。ハーレークインもモノにしてたくらいだからな。

 あれ、実はこんなにレビューするつもりはなかったんですが、思い出せば思い出すほど考察してしまう。でもネタバレになりますので実際鑑賞してくれると嬉しいな😊

 あとライアンゴズリング。久しぶりにミュージカルやってます。上手いです!
 一瞬出てきた人魚。あれジョンシナじゃね?と思ったらホントにシナさんでビックリ!
 
10円様

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