不安定な社会を生きる現代の若者たちの日常を映し出す青春映画。リアルを追求するために素人の不良を起用し、希望のない退屈な現実に生きる若者の憤りや苦しさを描いている。主人公のルカを演じるジェリコ・マルコヴィッチがいい。イケメンだし、無垢だけど歪んでる感じの見た目がルカというキャラクターにぴったりだ。
仕事を見つけられずふらふらして、楽しみといったらサッカー観戦くらいで、夜には友達と酒を飲んで騒いで家に帰る。退屈な日常を生きる若者たちは、行き場のない怒りを溜め込んでいく。コソボ独立反対デモの場面で悪い方向に暴力が波及していく混沌とした絵面のやるせなさ。自分のアイデンティティを見出だせずに、デモという大義名分のもと鬱屈した日々のフラストレーションを発散する若者たちの姿が、情感豊かでリアルな等身大の視点から語られる。サッカーの観戦でのDQN行動や彼女のハメ撮りなんかをSNSで流出させることへの問題意識の軽さは僕らからしたって他人事じゃない。
ルカが友達のアニキを怒らせて町中追い回される展開になるのだが、なまじ社会的地位のある輩を敵に回すと危険だという教訓だろう。学生時代にやくざの女をはべらせて友達の下宿を転々として逃げ回ってたやつがいたことを思い出した。
ひねくれた青春をのうのうと生きてしまった、そう生きるしかなかった若者へ贈る現代の青春映画だ。
