記録。
「聖なる娼婦」のあの笑顔。
キム・ギドクのベルリン国際映画祭監督賞受賞作品。援助交際(最近聞かないな、この言葉)をモチーフにした辛くも美しい物語。
「バスミルダ」「サマリア」「ソナタ」の3章仕立ての本作。きっと何が良いって言葉にするのが難しい類いの映画。言葉少なめ、登場人物の背景を説明することもしない。それでも一つのストーリーとして魅せる映画的表現の巧みさが、観る者をこの何処か現代のファンタジーのような世界観に浸らせてくれる。
対価を得て見ず知らずの男に抱かれる少女の絶えぬ純粋な笑顔。そんな彼女を失い「罪滅ぼし」をする事で笑顔を取り戻すもう1人の少女。「それ」を目撃する事で笑顔を失い罪を重ねる父親。
汚れも罪も等しく水では流せない。違うのは贖罪の必要性。汚れても償うべきことはない。ヒヤっとする瞬間はあってもあのような結末に着地した事に救いがある。
そのモチーフや暴力的表現にも関わらず醜さを感じさせない作品。いつかまた観返す事になるんだろうな。