垂直落下式サミング

ウエストワールドの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ウエストワールド(1973年製作の映画)
4.5
『ジュラシックパーク』の原作者マイケル・クライトンの初監督作品。スタッフが人形ロボットで構成されたアミューズメント施設で、機械の不具合からロボットの暴走が起きるSFパニック映画。
この遊園地は暴力に支配されたアメリカ開拓時代、厳かな中世ヨーロッパ、愛と快楽に満ちた古代ローマといった舞台が忠実に再現された3つのエリアに別れている。太秦映画村宜しく客がキャストとなって時代劇の世界を体験できる施設だ。すべてが自動化された園入場口の無機質で不気味な空気も合間って、平穏が崩れ去る場面で物語にぐっと引き込まれた。
前半は映画のような都合のよい作り事…、中盤からは映画のような現実の大惨事へと物語が変化する。最初はやられ役だったガンマンロボットに追い詰められる男の姿は滑稽で、映画を観ている我々にも現実の無情さを思い知らせてくれる。我々も映画やアニメをみていると「こんな世界に行きたい(///ω///)♪」などと思うことも多いが、よく考えてみれば夢の世界に没入したところで手前は物語の主人公になれる器じゃない。
荒野の決闘で胸ポケットの1ドル銀貨のおかげで命拾いすることなど無いし、惑星タトウィーンに行ってもオビワンは無視してくるだろうし、ミュータント遺伝子によって授かった超能力はクソの役にもたたないだろうし、良い女ばかりの世界で旅をしようとドンファンやジェームズ・ボンドのようなプレイボーイになんかなれない。夢が覚めれば弱くて凡庸な自分。映画に「映画なんか観て夢見てんじゃねえよ」と言われている感覚で、ドMの私にはたまらない。
SFブロックバスター作家マイケル・クライトンの創作論とテーマパーク論が凝縮された作品だ。