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暗くなるまでには/いつか暗くなるときにのsonozyのレビュー・感想・評価

4.0
タイの女性監督アノーチャ・スウィチャーゴーンポンが生まれた年1976年に起こったタンマサート大学虐殺事件(血の水曜日事件)は、反体制抗議活動をする学生ら多数を虐殺/負傷させた惨劇。
当時、運動に参加していた女性Taewの人生をテーマとした映画を製作する女性監督アンが、そのインタビューのため、自然豊かな田園地帯のコテージに二人で滞在する。
というのがベースとなるものの、なかなかにとらえどころのない作品でした。
トレーラー
https://youtu.be/aovV7VtDrvU

二人がコテージに来る前のオープニングからして3つのシーンが絡み、その後も、回想なのか、幻想なのか、アン監督の構想なのか…様々な要素が入り込んでくるので、実際はToewへのインタビューシーンはわずかだったり。

アン監督が森でたぬきの着ぐるみを来た少女(彼女の子供時代?)の姿を追い、マジカルにきらめくキノコと出会ったり、少女時代のテレキネシス(念力で物を動かす)体験の話も出てくるし、コテージのある森の小さなカフェで働く女性(ノン?)を演じた女優さんは、後半、複数の役を演じているのでワケワカメ状態になっていきます。笑

中盤、タバコ農園のシーンでイケメン君(ピーター)が登場して以降は、田舎から都会(バンコク?)へ舞台が移るんですが、そのあたりで、Taewとアン監督がコテージに来た前半のシーンの同じ内容を、別の女優たちが演じるという摩訶不思議さも注入。

ピーターは人気シンガー兼俳優のようで、魚のハリボテを身に着けての(笑)MV撮影や、新作の映画のオファーもあり順調な様子。
彼と対比する存在かのように、カフェの女性ノンの女優さんが、無表情なホテルの清掃員、リバークルーズのウエイトレス役として登場。

やっとコテージでTaewが事件当日について語ると、ノンの女優さんが、仏教の尼僧、さらにクラブでダンスする女性を演じ、バグったような画面を経てラストへ。

原題『Dao Khanong(ダオカノン)』はバンコク郊外にある地区の名前で、監督がそこに“始まりも終わりも関係ない旅のような感覚”を連想したことからだという。
監督のこの感覚に迷い込んだような視聴体験でした。

※そうそう、メリエスの『月世界旅行(1902)』のキノコのシーンも登場します。

・Thailand National Film Association Awards: Best Picture, Best Director, Best Editing
・Asian Film Festival Barcelona(Young Jury Award): Best Film, Best Director
・大阪アジアン映画祭: Special Mention
・Hong Kong Asian Film Festival: New Talent Award
ほか
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