垂直落下式サミング

テリファーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

テリファー(2016年製作の映画)
3.6
ハロウィンパーティーの後、ダイナーに寄った仲良し女の子ふたりが、そこでピエロメイクをした殺人鬼と出会ったことで、恐怖の一夜を過ごすこととなってしまう。仮装系スプラッター作品。
前半と後半で主人公が変わるのは『サイコ』のオマージュかしら。だとしたら、雰囲気作りにはしっかりと成功している。
残酷の大見せ場は、すっぽんぽん坂さ吊り大股開きギコギコ!インスタ系うざギャルにおしおき。趣味的で俗悪な拷問を打ち出しつつも、拳銃でけっこうアッサリと殺したりもするから、とらえどころの無い殺人鬼のキャラクターが独特だった。
無口なパントマイム殺人鬼のことを、変に内面があるようにしなかったのはよかったが、ラストは要審議。僕は後述する理由から、あんま好きじゃない。
ピエロの無敵感がよろしくない。コイツの根城に入ってきた人間がもれなく全員閉じ込められるんだけれど、いつ出口に鍵かけたんだろ?単独犯だし、そこまで気が利くようにはみえないし、あまりにも都合がよすぎて、次第にイライラしてくる。なんでもアリじゃん。
ハイライトは、途中出てくるホームレス女性が、殺人鬼の協力者かと思いきや普通に被害者になるところ。言葉を一言も発さないことで不気味さを出しているピエロとは対照的で、おなじ言語を話しているのに会話が通じないという恐怖も、僕らの近しいお隣さんとして存在していることを、強烈に突きつけてくるキャラクターだった。
最初、健康優良な若い女性に絡んでくるお人形を抱いた電波オバサンとのやり取りは、とても辛くなる。自分とはちがうセカイを見ているタイプの人との会話っていう逃げ出したくなるような地獄。
ピエロくんは、ホームレスでビョーキなこの弱者女性に愛を諭されるのだが、この女が精神的に弱いことをわかった上で、そこに漬け込んでくるのが悪魔ピエロ足るゆえん。拷問による嗜虐的な描写や派手なスプラッターで煙に巻かれるけど、後半はストーリーだけ追ってると超イヤな気分になるから要注意。
そりゃあ、スプラッター映画を好んで観に来る人間は、人が殺されていくのをみて快感を感じるタイプの変態だけれど、殺人鬼の側があんまりにも強すぎても、それはそれで冷める。
(少なくとも僕が)ホラーに求めるものは、残虐ショーであると同時に、善は悪に勝つ道徳的なストーリーであるから、あまりイヤな気分にはさせてほしくない。
途中で形勢逆転されて慌てるとか、最後の最後は負けるくらいじゃないと、つり合い取れないよ。映画を細かくカテゴライズするのは得意じゃないが、本作は胸くそ映画っていうくくりだと思う。