アキラナウェイ

V.I.P. 修羅の獣たちのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

V.I.P. 修羅の獣たち(2017年製作の映画)
4.1
韓国映画って、残酷な天使のテーゼ。

とことんエゲツなくて、グロ描写も容赦なくて、空気がピリピリしていて、手を抜かない。

なんでだろう?って暫く考えていたけど、本作を観て何となく答えがわかった気がする。

嗚呼、そうか。
南北問題が解決していないからだ。
休戦しているだけで、いつまた戦争になるかわからない。日本には絶対出せない、本当のリアリズムが日常にあるからだ。そんな気がした。

監督は、「The Witch/魔女」「新しき世界」のパク・フンジョン。

若い女性ばかりを狙った連続殺人事件。その容疑者は、韓国国家情報院と米CIAの企てにより、北から亡命させられたエリート高官の息子キム・グァンイル(イ・ジョンソク)だった。彼を追う
警視のチェ・イド(キム・ミョンミン)、彼を保護する国家情報院の要員パク・ジェヒョク(チャン・ドンゴン)、更に北朝鮮の保安省所属の工作員リ・デボム(パク・ヒスン)が介入し、運命の歯車が狂い出す—— 。

面白いッッ!!

追われる者。
捉えようとする者。
隠蔽しようとする者。
復讐しようとする者。

三つ巴ならぬ、四つ巴のドラマ展開。

卑劣極まりないグァンイルの犯行に目が釘付けになり、観衆は当然彼を捕まえるべく奮闘するイドの目線で事件を追うが、彼を保護しようとするジェヒョクの挙動に戸惑い、北から執拗に彼を追うデボムに一縷の望みを託す。

丸裸にされた女性。
同じく全裸になった男達が周りを囲み、暴力の果てに写真撮影に興じる。まともな精神なら耐えられない凌辱。

そして、彼女の首に巻き付けられるピアノ線。

あまりに残酷な殺害方法だからなのか、その首元にはボカシが施されている。

え!!なんで!?

実際にやっているけど、見せられないからボカシているのか、実際にはやっていないけど、それを誤魔化す為にボカシているのか、どっちなのよ!?あ、実際にやったら死ぬか。そうか。

悪い事をしているのに、捕まらない。

作品をパッと観ただけでは理解し難いが、米CIAと韓国の国情院が合同で亡命させ、韓国国内ではVIP待遇を受けたとされる"企画亡命者"。グァンイルは、それに該当するらしい。

CIAのポール・グレイ役にピーター・ストーメア。その風貌と演技力から、僕は彼は悪魔的だと思う事が多いけど、そんな彼が劇中はずっとオロオロしている。それ程に、グァンイルが犯した罪は冷徹非道で悪魔的。

緩む事のない緊張感。
プロローグに再び帰結していくエピローグ。
最初から最後まで飽きさせない。

ベビーフェイスのイ・ジョンソクの笑顔が腹立たしいったらないのよ。なので、観て。