頭の上の赤い林檎

夜の大捜査線の頭の上の赤い林檎のレビュー・感想・評価

夜の大捜査線(1967年製作の映画)
3.6
 これは、わかりきっていたがかなり色濃く人種差別の悲惨さを映し出している。

 北部からやってきた黒人警官の主人公がいわれもない理不尽な形で警部殺害の容疑で逮捕されるところから始まる。

 早速冒頭から昔ながらの黒人差別前回で幕を開けた今作。かなり堅実なサスペンスで、理不尽を受けながらも持ち前の洞察力と行動力で主人国が事件を解決して物語の幕は閉じる。

 私的に少し面食らったのは当たり前っちゃ当たり前なのだが、いくら活躍し、事件を解決に導こうとも黒人に対する南部の白人の態度は物語通して変わらかったというところである。

 そりゃそうなんだよな。生まれながらにして我々が北朝鮮やロシアといった社会主義、信仰宗教は悪であると、その根拠は一切説明もなしに育ってきたように、彼らのカルチャーには当たり前のように黒人の農婦、奴隷、KKKとかいう土地狂った組織がいたわけなんだから。

 それをうまく利用し、逆境に逆らう主人公に感情移入しやすいようにできているのも今作の素晴らしい点でもある。

 それでとにかくそんな文化全てを理解しきって、怒りと諦めが入り混じったなんとも言えない絶妙な表情の主人公がこれまた素晴らしい。
 
 ただ、そんな背景があってのラスト。散々無下に主人公を扱っていた所長が作中で唯一主人公を理解し、分かち合い、微笑みあっての別れ。いい締め括りだったと思う。

 ただ、もう少し所長と同じ現場での連携とか、終盤の本音を吐露するシーンが個人的には見たかったかも。でも、中々面白かったです。