ヨーク

クリード 炎の宿敵のヨークのネタバレレビュー・内容・結末

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

初めてのロッキーが4だった自分としてはイワン・ドラゴというキャラクターはロッキーシリーズの中でも特別でもっとも好きだと言ってもいい登場人物であった。ボクシングサイボーグとしての生き方しか知らなかったドラゴがロッキーとの戦いの中で「祖国のためではない、俺は俺のために戦うのだ!」という境地に達したシーンは今でも脳裏に焼き付いている。
だからこそ今作でドラゴがロッキーに対して復讐心を持ち続け私怨ともいえる感情をぶつけてきたことに違和感を禁じえなかった。お前は4でのロッキーとの戦いでそういう憑き物は全部落ちたんと違うかったんかい、と。そういうわけで鑑賞中は今作のドラゴのキャラ付けにはノレなかった。父の死を受け入れて乗り越え、さらにビアンカとの間には子供もできるというアドニスの物語としては文句なしによく出来てるが故にその部分は最後まで気になってしまった。
そのモヤモヤが晴れたのは意外にも作品とは関係のないことで、エンドロールが終わって席を立った時に中学生くらいの4人組の男子を見かけたことがきっかけだった。俺は勝手にクリードという映画シリーズはロッキーファンのおっさんたちしか興味を示さないような作品だと思っていたがそれだけではなかった。かつての俺がそうだったように今の10台の少年もこの愚直で不器用なボクシング映画に熱くなれるのならそれ以上のことはないという気がしたわけだ。
そしてそれはそのまんま今作でのドラゴの生きざまに直結して思い直したのだ。やはりドラゴはロッキーへの憎しみや復讐心でアドニスの前に立ちふさがったわけではない、と。ドラゴもまたかつて自分が経験したことを自分の息子に伝えたかったのではないか。俺は俺のために戦う、ということを。
あぁなるほどこれは子供へ、次の世代へと継承するということがテーマの映画だったのか。昔のことを掘り起こしてグチグチ言ったのもロッキーとアドニスをその気にさせるためだったのかもしれない。
ロッキーシリーズには試合には負けたが勝利以上のもを手に入れた、というオチがよくある。今回のドラゴ親子は正にそうだったのではないか、最後に親子でランニングしている姿はそういうことだったのかもしれない。
鑑賞中はモヤモヤすることもあったが後でよく考えてみればとてもいい映画だったように思う。
あと、どうでもいいがドラゴのことしか書いてないなこのレヴュー。
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