ウシュアイア

チア男子!!のウシュアイアのレビュー・感想・評価

チア男子!!(2019年製作の映画)
3.7
勝利至上主義、意識高い系からの脱却から自己成長の物語へ。

朝井リョウの同名小説(未読)を原作とする映画。

朝井リョウは『桐島部活やめるってよ』ではスクールカーストを、『何者』ではSNSと就職活動を通じて、意識高い系を悪意をもって揶揄し、批判してきた。映像化されていない作品でもちりばめられており、朝井リョウは意識的か無意識のうちにか若者に向けて承認欲求のみに基づく空虚な意識高い系からの脱却を促しているフシがある。

本作品は確かにゼロベースの部活を舞台とした青春ドラマで、言い出しっぺやハイスぺ経験者に暗い過去やトラウマなどがあるなど、ベタな部活モノ少年漫画のようなストーリーではあるが、自己実現のあり方が説かれている。

作中のチーム名は”BREAKERS”で、登場人物たちは何らかの自分の殻を破ろうとしてキワモノ扱いの男子チアリーディングチームに参加する。ゼロスタートの部活モノということで結末はお約束の初めての発表会で、そこで客観的に何かすごいことをするわけではないが、一人一人がそれぞれの課題に取り組み、チームとしての目標に取り組む姿が描かれている。

一方では柔道一家に育った主人公晴希が芽が出ず柔道をやめたところでは、他者と競い合うことでの自己実現の限界を示し、また男子チアリーディングをサポートする(フリをしていた)学生会の存在から意識高い系を否定し、全体として昭和的な勝利至上主義、平成のSNS世代に現れた意識高い系(結局は何もせずマウントを取りたいだけで勝利至上主義より性質が悪いんだけど)から脱却し、一人一人の自己成長の物語へ導かれている。

主演の横浜流星はセンターにいるキラキラしたイメージがあるが、他の登場人物の物語を邪魔せず、どこにでもいそうな大学生になりきっていたと思う。
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