ヒノモト

王国(あるいはその家について)のヒノモトのレビュー・感想・評価

4.1
出版社の仕事を休職中の亜希が実家へ帰省中に、幼なじみの野土香の新居を訪れる。大学の先輩と結婚をし、新居の心地よい空間に亜希は隔たりを感じるというような物語が一応ある作品ですが、映画としての映像は冒頭と最後しかなく、その間は、その役を演じる俳優たちのリハーサル風景、台本の読み合わせの反復の中で、それぞれの役を体現していくまでのプロセスを追いかける作品。

初日に観に行きました。
物語をストレートに語る映画ではないので、観る人を選ぶ作品ではあります。

身体表現として、与えられた役柄を体現していく過程を見るという行為、同じシーンが何度も繰り返されていくことに、苦痛に感じるかというとそうでもなく、セリフや仕草、会話の間合いの感覚が洗練されていく過程、変化していくこと、その追究、その奥に微かに感じる物語の片鱗を探っていくような、体験としての面白みは存分に感じることができました。

物語の側面としては、王国と呼んでいる自分の中での境界線の心理的な奪い合いと葛藤の果てにあるものを描いているようですが、物語(情報)を積み重ねることよりも、椅子とテープルだけのシンプルな空間であることが、繊細さをより産み出しているとも感じました。

上映後のトークで、作品製作の経緯や、エピソードを聞くこと、シナリオブックを読んだ上でプラスされる部分も大きかったですが、映画としての完成されたシナリオの全てを語らないことで見えてくる俳優である以前に人間の個がぶつかる様の響きが、映画という完成されたフィルターをあえて外れたところに詳らかに見えることの脅威を感じて、震えました。

上映後の写真を含むブログは以下にて
https://ameblo.jp/hinomoto-hertz/entry-12832182887.html
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