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ザ・ドールのhorahukiのレビュー・感想・評価

ザ・ドール(2016年製作の映画)
3.3
私には生きるチャンスをくれた?

良く『死霊館』と比較されてるのを目にしていたのだけど、予想以上に『死霊館』で笑った…🤣これインドネシアでのリメイク作?と言われても仕方ないレベルに酷似した展開だし、ブロローグなんてほぼ完コピ…。

妻が人形をコレクションしてるという『アナベル』感、『死霊館』でのクラップクラップをベルに変更した隠れんぼ、タンスの上から飛び降りて来る化け物、そして極め付けは娘のいる霊能者夫婦と自宅に保管している数々の霊的アイテム…。良く怒られなかったよね、これ😅

とはいえ内容的には正統派なオカルトホラーで、安心感ある展開・演出で構成された手堅い作品。裏を返せば面白みも新鮮みも感じられないものではあるんだけど、インドネシア独特の空気感とか彩度高めな映像、文化的な違いのおかげで楽しくみられた。

特に面白く感じたのは「ドアが開いている」ことが異常なことだという前提に立った演出の数々。家の中のドアって当然開いてることもあるわけだけど、ドアの開閉を違和感を結びつけるための土台作りが本作の場合にはほとんどなく、「ドアが開いている」状態が何の前置きもなく直接異常へと結びつく。ここはインドネシアにおける習慣的なものに起因した演出なのかなって思った。知らんけど。

鏡や窓の反射を使って移動を描き、キャラの視界を外したところに彼方側への誘導が現れるというオカルトホラーらしい見せ方だけでなく、落下を二回手順を繰り返して見せるという容赦のない残虐さも備えているのも良い感じ。

そんで根底に感じるのはインドネシアの所得格差。昇進した主人公が「これで明日の食事にも光熱費にも心配しなくて良い」と妻に話すシーンがあるけれど、正社員として勤めていても光熱費すら支払えないほどに貧しいのだという現実。今の生活を維持するために夢を諦めなければならないために、下がることはあれど上がることのない生活水準。決して抜け出せない貧困。

将来に全く希望を見出せない若者たちの怒りと、格差是正がなされないが故に犠牲となっていくものの悲鳴。その象徴としての怪異が子どもだというのも未来を悲観する製作陣の想いの現れなのだろうし、誰も幸せにはなれない負の連鎖による救いのなさを痛烈に訴えかけてくる。そんな感じで、本作を見る限り、インドネシアの状況は相当酷いのだなというのが痛いほど伝わってきた。

際立った何かは感じなかったけど、凄く真っ当なオカルトホラーだし、丁度良いライトさもあって良かった。
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