垂直落下式サミング

エターナルズの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.0
マ・ドンソクが、ハリウッド作品でアンジーのような大物と同じ画面におさまる日が、こんなに早く実現するなんて!とテンションが上がったのに…。続編をみる意欲を削がれて暗黒面に落とされた…。
アクションシーンが華々しくなくていけない。意図的に作り込まない映像のなかに、荘厳な衣装を着た一流俳優っていうアンビバレンツ。自然光を取り入れたロケーション撮影にこだわり、過度にレイヤーを重ねない絵作りで役者を撮っているのだけど、これが逆効果。ヒーローたちが平場で突っ立てると、天気わるい日のコスプレイベントの中継みたいなショボさ。
ホントは重厚な神話みたいなのをやりたかったろうに、ムリにスーパーヒーロー映画の枠に当て嵌めようとしてる窮屈さを感じる。もっと自由に、もっと縛られずに、フォーマットにとらわれない物語がみたい。
その意味で、MCUの連作が前提みたいな製作スタイルは、もはや妨げなのではないか。10年前のアベンジャーズ成功あたりからスーパーヒーロー映画が覇権とってて、ずっとそれしか流行んないから、つまんない。なんか、どれも要するにケンカだし、飽きた。そろそろ次の流行が現れてほしい。
それにしても、不愉快な物語だったと思いますけどね。倫理的な観点からみて、エターナルズのやってることが傲慢に感じられた。
ディビアンズは何の躊躇もなく殺しますけども、それってどうなのよ。与えられた役割が違うだけで兄弟のような存在らしいじゃないですか。望まれない存在として生まれた失敗作という、明らかに自分たちよりも不幸で可哀想な存在を、どつきまわして勝ってドヤるみたいな、いじめっこしてるみたいな爽快感のなさ。エターナルズくんさあ、サノスさんよりもタチ悪くなぁい?
都合の悪いやつは殺しますって、そのシステマチックな構造が結局最後まで揺るがないから、ずっと思想的に浅いところをなぞってる感じがした。それなら、いっそ皆殺しの勢いで無双してほしいんだけど、神にも等しい完全無欠っぽい触れ込みのわりには、あんま強くないっていうか、群れで来られるとキツみたいな、絶妙な強さ加減っていう。
魅力的な敵が現れないと内ゲバに走るMCU。それを思えば、サノスの人物造形はよく出来ていた。リベラルの理想を体現していたバオマ政権がパッとしないまま終わった後、移民とか要らなくね?とぶっちゃけトランプ登場にともなう大騒動っていう、皆が皆どこかに敵を探している分断のアメリカを象徴する悪のあり方を具現化してみせていた。そう思う。
公開当時の時勢を踏まえると、サノスの倫理は過激派環境論者にもみえるし、上から目線の管理主義思想家ともとれる。なんにしても、思想信条の違うもの同士が、一体となって立ち向かうべきものとして、絶対的な偶像だった。
そんで、避けて通れないのはサピエンス全史問題。人類学の決定版な超ベストセラーを今年ようやく読了したことによって、ついにエクストリーム意識高い系への仲間入りを果たしたオイラである。
それをアンタ、今さら太古に超常存在がやってきて人間を作ったみたいな似非科学オカルトをやられてもね、もう心は動かされないってわけなのよ。僕らの先祖が歩んできた道は、こんなバカなマンガより面白いんだから。