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アルプススタンドのはしの方のCinemanのレビュー・感想・評価

3.0
『アルプススタンドのはしの方』
城定秀夫監督
2020年公開 日本
鑑賞日 2023年8月12日 U-NEXT

超低予算で創られた優れた作品の典型です。
青春がちっとも輝けないのはしょうがないのだろうか?
しょうがないと諦めてはしょうがないのじゃないだろうか?
誰でも熱い青春をおくることは出来る。
一歩踏み出すか出さないかで青春の輝きは変わる。

【Story】
夏の高校野球第一回戦、5回裏。
「夢に向かって全力野球!」という横断幕が掲げられている応援席では部長の久住智香(黒木ひかり)がトランペットを吹くブラスバンド部が盛り上げ、生徒や教師たちが一生懸命声援をおくっている。
応援席の後ろの隅っこのベンチに座っている安田あすは(小野莉奈)と田宮ひかる(西本まりん)。

カキンと打った音。
「今のアウトなの? 今度は守り?」
2人とも野球のルールがよく分からず、犠牲フライを知らないため、どうして相手に点が入ったのか分からない。「今の点が入ったの? とったのになんであの人は走ったの?」「実は落としていたのかな?」「迷宮入りだね」と不思議がっている。

元野球部員の藤野富士雄(平井亜門)が彼女たちの近くに座ったので藤野に野球のルールを解説をしてもらいながら3人は試合を見守っている。
彼らから少し離れた後方には成績学年一位だが人付き合いが苦手な宮下恵(中村守里)が1人佇んでいる。
彼女はイケメン・ピッチャーの園田二に想いをよせている。

元野球部員の富士雄は園田がピッチャーでいる限りどんなに練習しても自分は試合には出られないことを自覚して退部した。
あすはとひかるは演劇部員だ。演劇部の関東大会出場目前で主役のひかるがインフルエンザに罹ってしまい出場できなかったことで、お互いに妙な気のつかい方をしている。
恵は高校入学以来初めて成績学年一位の座を吹奏楽部部長の久住智香に明け渡してもんもんとしていたところ美人の智香がイケメン・ピッチャーの園田と付き合っているということをひかるたちから聞いてしまう。
そんな四人の前に時折「お前たちも大きな声を出して応援しろよ」と熱血漢の厚木先生が見回りにくる。

富士雄は野球が大好きで人一倍練習に励んでいるものの野球的センスがまったくないので万年ベンチを温めている矢野の話を彼女たちに話す。
富士雄とか矢野が試合に出られないのもしょうがないし、ひかるがインフルエンザに罹ったために演劇部の全国大会の出場をあきらめたのも「しょうがない」。
富士雄をひかりとあすはは「しょうがないよね」が口癖だった。

試合はいよいよ大詰めを迎えた。
優勝候補チーム相手に終盤8回裏、4対0。
園田は健闘しているがホームランを打たれてしまった。
「相手は格上だから、しょうがない」と諦めたように言うあすはに恵は「頑張ってる人にしょうがないって言うのやめて!」と怒る。
あすはは「私はめちゃくちゃ頑張ったけど、しょうがないって言われた。恵さんにはそんな経験ないだろうけど」と言い返す。

そんなさなかに万年ベンチの矢野が選手交代で出場して送りバントを成功させて4対2まで追い上げる。
嬉しそうな矢野の姿を見てひかるが「もう一度全国大会に出よう。あすはと一緒に舞台に立ちたい」とあすはに話しかける。
恵も一生懸命トランペットを吹いている智香に「大きな音出していくよ!」と声をかけると智香は嬉しそうに振り向いた・・・。

【Trivia & Topics】
*原作について。
『アルプススタンドのはしの方』(アルプススタンドのはしのほう)は、兵庫県立東播磨高等学校演劇部の顧問教諭を務めた籔博晶による高校演劇の戯曲。当時の演劇部には部員が4人しかいなかったために4人の会話劇が創られた。
2016年に同部で初演。2017年第63回全国高等学校演劇大会にて最優秀賞を受賞した。
2019年に東京・浅草九劇でリメイクされて上演された。
その時に出演した小野莉奈、西本まりん、中村守里が本作品に出演した。

*アルプススタンド。
阪神甲子園球場にある内野スタンドと外野スタンドの間に位置している観客席のこと。阪神甲子園球場での撮影許可がおりず神奈川県平塚市にある平塚球場で6日間で撮影された。

*受領歴。
2020年7月24日に公開され9月には観客動員数が2万5千人を突破するヒットとなりその後3万人を超えて全国上映館120館までに広がった。コロナ禍の2020年を代表する青春映画と言われている。

・第42回ヨコハマ映画祭(2020)監督賞(城定秀夫)。

・2020年度日本映画ベストテン 第6位。

・第12回TAMA映画(2020)特別賞受賞。

・第94回『キネマ旬報ベスト・テン』(2020)日本映画ベスト・テン10位。

・『映画芸術』2020年日本映画ベストテン&ワーストテン、ベストテン3位。

・第30回日本映画プロフェッショナル大賞
 監督賞(城定秀夫)
 ベストテン3位。

・7月第4週公開映画初日満足度ランキング」(2020、Filmarks)第1位。

*東播磨高校の甲子園初出場。
映画公開の翌年。2021年3月19日開幕の第93回選抜高校野球大会の21世紀枠で東播磨高校の初出場が決まった。推薦理由の1つに演劇部の活躍が挙げられた。

【5 star rating】
☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。
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