垂直落下式サミング

エクソシスター 悪夢の夜明けの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.7
戦後PTSDをわずらう父親に自分以外の家族全員を惨殺されて孤児となった少女は、人里離れた修道院に身を寄せシスターとして平穏に過ごしていたが、いつしか悪魔の存在を近くに感じるようになる。それは修道院を襲う恐怖の始まりだった…。
シスター服フェチなので、いろんなお姉さんの洋装尼さん服がみられるだけでもドキドキで、なかなか好きな一本。着てほしいな。ドンキとかの安物じゃなくて、本格的なヤツ。つーか、俺が着たい。
映像やらなにやらはキチンと水準に達している。映像と景色がキレイだし、最初から物語としてはわかりやすい象徴がいくつもあるから、安物特有の退屈さはない。
特にいいのは、冒頭のポストが壊れるという仄めかし。父親の手によってバラバラになる木箱。主人公が、大切な人と愛情をやり取りすることができなくなり、心を閉ざしていく暗示であるし、最初の惨劇の前に振り子の音が大きくなって恐怖を煽ってくるのも、いい演出。PTSD父の時間は戦場で止まっていて、機械的な音だけが彼を置き去りにしているような表現がなされていた。
チクタク…チクタク…という音。逆撫でされるのは、時間そのものに対する恐怖。自分の体調とか気分とか関係なく時を刻む規則率って、実はとても恐ろしいモノなんじゃなかろうか。
振り子時計の音は、主人公のみる悪夢にも干渉しているから、悪魔をみるのは親から子に引き継がれた呪いと精神性なのだと突きつけてくる。心は壊れているのに、どうしてこんなに冷静でいられるのかと、答えのない懺悔が痛々しい。
主人公のみる悪魔祓いの幻影は、手足を拘束されてネグリジェ姿で苦しむイメージ。おぞましい演出だけれど、主人公が寝るたびに何度もカットインするから慣れちゃって、腕を大の字に広げて胸をつきだして苦しむ姿が、だんだんエッチくみえるようになってくる。
最初っから最後まで怪しかった神父は、しっかりと顔がうざい。嫌みなこと言ってきてイヤだなあ死んどけやと思ってたら、ヘイトが溜まりきったところで、ちゃんと報いを受けてくれる。うれち。
ベタに悪魔を認めちゃって、そこから収拾つかないからどうすんのって思ったら、ラストに見覚えのある家の絵が出てきてテン上げ。アミティヴィル事件に向かうお話だったのか。なるほど、頭のなかに響く「殺せ」って声や、冒頭の一家惨殺をしっかり描写するのはそういう意図だったわけね。なかなか嬉しいサプライズ。ビックリした。