とらキチ

警官の血のとらキチのレビュー・感想・評価

警官の血(2022年製作の映画)
3.9
汚職の疑惑がかけられた刑事の内偵調査を命じられた若き刑事が、警察組織の闇と亡き父の真相に近づいていく。
たしか原作は長篇で、親子三代にわたって警察官となった3人の男達の生き様を描いていた作品で、今作ではその3人うちの子(二代)と孫(三代)の代の、孫がメインのストーリーを元に製作されている。
韓国作品らしく、非常に巧いこと原作から換骨奪胎されていたなぁ、という印象。
原作は、当時北海道警で、まさに“ミイラ取りがミイラになる”ような拳銃押収事件の捏造疑惑や、裏金造りが発覚し始めていた頃に執筆されており、それまでの「警察官vs犯罪者・犯罪組織」ではなく、警察小説としては異色な「警察個人vs警察組織」の対立構造が意識されている。
「相棒」のような官僚達の権力闘争や組織防衛のための個人の排除等が描かれていて、非常に骨太で見応えがあった。「相棒」視聴時なんかに、たまに感じる「日本でそんな事ある?」っていうような事項も「韓国ならあり得るかも…」って思えたし、このようなサスペンスノワール作品は、もう韓国の独壇場だと思えてしまう。
あの「パラサイト」のお兄ちゃん。初めは融通の効かない真面目一辺倒だった新人刑事が、捜査や内偵をしていく中で内心苦悩や葛藤を抱えながらもどんどん逞しく強かになっていく様子がちょっとした表情の中にも窺えたりして素晴らしかった。
これまで観てきた韓国作品では、警察=ポンコツとして描かれているのがデフォルトだったので、今作と前に観た「犯罪都市」で多少は有能な感じになっていたのでちょっとは見直したけど、それでも“鉄拳制裁”や“違法な取り調べ”“汚職”に“組織腐敗”だしなぁ…と複雑な気分になってしまった。それと、ムダに女っ気が無かったのも、ゴリゴリ感が出ていて良かった!
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