ヨーク

ジョン・ウィック:コンセクエンスのヨークのレビュー・感想・評価

4.2
映画とドラマ版でのスピンオフ展開はすでに発表されているがひとまずナンバリング的な本筋としては一旦手仕舞いである『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でしたが、いや、やっぱ面白かったですよ。コロナ禍もあって本作の撮影から色々バタバタしたみたいだけど続編はどうするんでしょうね、監督は最初は意欲的だったけど最近のインタビューではやや消極的な感じになってるという印象だったが…。ま、1ファンである俺がそんなこと気にしても仕方なく、やるなら観るよってだけなんですけどね。
お話は前作の『ジョン・ウィック:パラベラム』の感想でも書いたが正直あってないようなもの。1の時の事件で本人が望んでないにも関わらずジョン・ウィックの健在ぶりを発揮してしまったので2でマフィアとのゴタゴタに巻き込まれ、その中で気に食わねー奴を殺し屋業界の掟を破ってまでぶっ殺したら裏社会全てを敵に回すことになって前作からヒーヒー言いながら追手を殺しまくる生活になったジョン・ウィックの明日はどっちだというお話ですね。一言で言えばキアヌ演じるジョン・ウィックあの手この手で襲ってくる人をぶち殺すだけの映画である。
なので2以降ずっとそうだがお話が面白かったとかつまんなかったとかはない。一応今回は完結編なのでジョンもいい加減追われ続けて殺し続ける生活に疲れたのか、何とかけじめをつけて手打ちにしようという流れにはなるのだがやってることは前作までと変わらず銃や刃物や果てには弓矢まで飛び出してくる様々な人殺しシーンのオンパレードという映画である。そういう映画なんでお話自体は何も期待してなかったけど、でも中々いいオチでしたよ。ぶっちゃけ観る前は3時間もやることないだろと思っていたがアクションの面白さに因るところがほとんどだが最後まで飽きることはなかった。流石にオチの詳細は書かないがシリーズをずっと見てた人なら収まるべきところに収まったなと思うのではないだろうか。殺して殺されての応報へのジョンの結末としてはあれでいいのではないかと思う。そして多くの客が「あの件はどうなったんだよ!?」と思いながらエンドロールを眺めていたと思うが、映画の本筋として描かれたジョン以外のその応報は…というところも忘れられてはいなかったのでよしよしとはなりましたね。まぁあの後を描いたスピンオフとかが来たら観たくなるのでシリーズから卒業させてくれない卑劣な引きとも言えるが…。
しかしエンドロールといえば個人的に一番グッときたのはスタッフ名が流れ始めるとキアヌ・リーヴスやドニー・イェンといった主要キャストの名が映された後に大きめの改行幅を設けて何ならキアヌの名前よりも目立つようにしてスタントコーディネーターのスコット・ロジャースの名前がクレジットされていたことだった。いやこれはちょっと目頭が熱くなってしまったな。もうメインもメイン、主役級の役者たちの後にスタントコーディネーターという役職の人間の名前がきていたのだから。
こう言うとジョン・ウィックファンの人には怒られるかもしれないが、個人的にはぶっちゃけ1作目の時からストーリー的には出オチ的なネタでそんな何作もシリーズ続けるほどのもんかよという内容だったと思うのだ。でもこれも1作目からそうだったがお話はともかくアクションに関してはぶっちぎりに面白かった。ガン=カタからガンフーへと一歩前進したのは間違いなく初代『ジョン・ウィック』の功績と言ってもよいだろう。そして2以降もお話は大して面白くはないのだがアクション面に関しては毎回驚くシーンが必ず数シーンはあった。そういうシリーズなので今のところ完結編となる作品のエンドクレジットでデカデカとスタントコーディネーターの名前が掲げられていたらやっぱグッとくるってモンですよ。それは制作サイドがジョンウィックというシリーズで何をやりたいのか、客にどういう楽しみを提供したいのかということがシリーズ第1作目からブレずに完結まで漕ぎつけることができたという証であろう。本作の劇中、大阪コンチネンタルのシーンでも背景に”初志貫徹”とあったが、あれはなんちゃって日本を演出するためのブレラン由来の強力わかもと的ネオン芸というだけではなくて確かにジョン・ウィックシリーズが最後までその志を忘れずに完走できたという記念碑的なアピールであったのだ!
ま、そういうね、具体的な映画の感想など一切書かずにそういう妄言を垂れ流す感想文になっているということは俺としては非常に満足した映画だったということですよ。大体が俺、大前提としてキアヌが好きだからね。だからキアヌが頑張って色んなアクションしてるだけで満足なんだろ? って言われたら首を縦に振るしかないのだが、そういう人間にとって本作がつまんないわけないから。
ただまぁ、アクションは全体的に面白いんだけど前作から引き続き防弾スーツの性能がエグイので、敵味方共に銃弾を何発も身体に撃ち込んでもビクともしない、というシークエンスが頻出してそこはちょっとまどろっこしいなと思うところはあった。1の時は肩とか腹に一発入れた後は大きく態勢を崩した相手の頭を容赦なく撃ち抜いて終わり、という美しい所作染みた流れがあったのだが多くのキャラが防弾スーツを着るようになるとそうはいかずに、良く言えば頭を撃ち抜くまでを詰め将棋的な、或いは柔道の寝技のような理詰めの身体的な動きを追っていく様が丹念に描かれるのだが、悪く言えばそれはモブとのバトルの描写としてはまどろっこしいよ、というのがある。実際、シリーズを重ねるごとに1の時のようなジョン・ウィック無双感はなくなってきているのでバッタバッタと敵をやっつける爽快感という点ではイマイチかもしれない。
またこれは俺以外にも多くの人が言及してると思うけど、アクションの多くの部分、特に後半の俯瞰視点になるところなんかはモロにテレビゲーム的な演出になっていて、そこが人を殺す映画の暴力表現としては軽すぎるだろうというのもあろう。1の時は深手を負ったジョンの描写とかが痛そうで痛そうでそこにある暴力の生々しさというのがあったが、その部分は(もうやったからということかもしれないが)どんどんオミットされていったからね。ただまぁそこは銃で撃たれたら人は死ぬという当たり前のことを描くのではなくてアクション映画としての快楽だけを追求することにしたんだろうな、とは思うが。それが良いか悪いかは別として。
ただそういうゲーム的な楽しさ優先で画面を作ることを第一としたおかげか、凱旋門辺りのシーンなんかはめちゃくちゃアホっぽくてゲラゲラ笑いながら観てしまったので正直その方向性も大好きでした。あとゲームっぽいといえば上記したように防弾スーツが超強力なんだけど、ジョンが作中しきりにスーツで頭をガードする仕草がテレビゲームのガードモーションにしか見えずにそれも笑ってしまったな。プレイした人なら分かるだろうが『SEKIRO』で狼殿がチャキチャキチャキチャキするみたいなね。
そういうわけで、こんな映画ばっか観てたらアホになるよというところはあるのだがドニー・イェンの盲人アクションとか文句なしに面白いし、シリーズを通してのジョンの足踏み感が自分の人生の写し身のようにも思えて笑いながらもウルッときてしまう後半の階段落ちとか、文句なしに面白い映画でしたね。悪役のムカつく感も素晴らしいし、ちゃんと犬も活躍するしね。数少ないガチめの文句としてはキアヌと真田広之のバトルを観たかったということくらいかな。もちろんサニー千葉の弟子とファンの共闘というのもそれはそれで悪くないが…でもまだ二人がギリギリ身体動くうちに対決も観たかったな…。
まぁあんま深く考えずに最高レベルのアクションを体験するというアトラクション的な楽しみ方でも十分楽しめるのではないでしょうか。ちなみに続編は…どうなんだろうね。ウィンストンは生きてるときから”事前に”墓を用意するような男だということだったから続編はいくらでもやりようはあるでしょう。個人的にはスッキリと幕引きしてくれた方がいいけど、やるんなら観ますよ。面白いシリーズでした、満足。
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