マクガフィン

ヤクザと家族 The Familyのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.4
冒頭のバイク・シーンでスクロールする被写体の捉え方、ヤクザになった経緯を丁寧に描き、全身入れ墨をして昔気質なゴリゴリ・ヤクザになったことが瞬時に分かる主人公のバックショットが抜群に映える。藤井監督ならではの強度抜群の画力に引き込まれて、重厚なテイストなのにテンポ良く丁寧に積み重ねる前半に好感。いつも通りに、重厚一辺倒なテイストで押し切ると思いきや、綾野剛と尾野真千子のコミカルで軽妙なやり取りが抑揚になることがテイストの進歩に。

暴対法前後のヤクザ達の悲壮かと思いきや、ヤクザに振り回される本当の家族達の重層的な悲壮が興味深い。最後まで興味深く鑑賞できたが、群像劇としての捌き方としては脇役の掘り起こしが若干不足し、既視感や整合性が疑問なエピソード、キャラの特徴がステレオタイプことで、強度抜群な画力と隔たりがあるプロットの弱さは何時も通りに。それでも綾野剛の熱演、北村有起哉の脇役としての作品の引き締め方、余計な力を排除した舘ひろし、余計な力が抜けた市原隼人の演技力や役者の演出に見所も多い。三代にわたる、ヤクザ自身の因果や法律による負の波及、その関係性による巻き込まれる人々の負の連鎖による重層的な哀愁が悲しくて仕方なかった。