こんな話が映画として面白いのかと疑問だったが、非常に面白くて２時間４０分、飽きずに観ることができた。
監督のアンソニー・ミンゲラは多作ではなかったが、本作と「コールドマウンテン」でともに過酷な環境下での愛を描いている。
第二次世界大戦時代の北アフリカを舞台に、戦争で全身火傷の傷を負った男の過去の不倫と、彼の看護師の献身、彼を恨む男の執念が複雑な時間の行き来の中で語られる。
複雑なストーリーに引き込まれるが、レイフ・ファインズ、クリスティン・スコット・トーマス、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、４人の演技合戦も見ごたえがある。
彼らの演技によって終盤は感動の連続だが、特にジュリエット・ビノッシュが素晴らしい。レオス・カラックス作品もいいが、アメリカでもいい映画にたくさん出て成功している。
中心は不倫の話ではあるが、そこには戦争が大きな影を落としている。
面白いのが、研究・冒険を続ける人々が、戦争が広がることで初めて国籍を意識するところだ。ほとんど自由に動いていたはずが、戦争によって自由を奪われる。そして逆に戦争下で国境を越えた愛が生まれる。
そんな美しく醜い人間の姿から、人間の愛の深さと戦争の罪深さを感じることができるだろう。
タイトルはいったい誰のことなのか。火傷を負ったアルマシーのことだけではないように思えた。
