垂直落下式サミング

プチ温泉芸者の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

プチ温泉芸者(2000年製作の映画)
3.8
祖母にはじめて会いにいく途中だという女の子の車に拾われたヒッチハイクギャルが、その子の祖母がやっている箱根の老舗旅館に宿泊。そこで温泉宿の経営が窮地にたたされているを知り、成り行きで集客に協力することになる。箱根観光協会の女性従業員を加えた3人で、旅館を盛り上げるために客引きとプチ芸者をはじめるのだが…。箱根温泉全面協力の湯けむりお色気ムービー。
整地開発とそれに伴う老舗旅館買収。いろんなギャグ的キャラクターが出てきて、お色気をはさんで右往左往しながら伏線回収。よしもと新喜劇で、さんざん擦られたプロットを丸パクリしたようなオハナシ。
低予算作品に出ている役者に演技を期待しても仕方ないけれど、だいたいが棒読みで困っちゃう。なかでも、女の子達が温泉に浸かってるときにする「きもちいいねー。やっぱ温泉だわー。」みたいな、台本すら存在しないのかと思うほどフワフワしたやり取りはなんなんだろう?演技を越えたなにか、温泉シーンを撮るからなんか喋っててと、オトナに演出を丸投げされたであろう素人のリアルが、そこに写されている。
スレたギャルのプチお色気が幾度も挟まれるが、ベタなストーリーのうえに乗っかってるのは、以外にもホロッとさせる上質な人間ドラマであった。脚本を練った人の手腕は大したものだと思う。
家族愛、異性愛、血縁を越えた愛、3つの軸の上にいる各キャラクターの群像をしっかりと整理して、最後の大オチまで動かしきった上で大団円を迎えているから、終わりよければすべてよしって気持ちにさせられる。
特に好感を持ったのは、地上げ屋チンピラのボスのあつかい。普通だったら徹底的な小悪党として物語から切り捨ててもいいような負け犬に、女将さんがセカンドチャンスを与える優しさに感動してしまった。誰にだって救いがある。間違いをおかしたら埋め合わせればいい。この世は、品行方正な勝者の物語だけじゃない。
そして、世界のどこかで今日も人は別れて、新しい愛が生まれている。キャラクターにそれぞれの旅立ちを用意するラストシーンの素晴らしさたるや。ちゃんとした、いい映画でした。