レオピン

しろばんばのレオピンのレビュー・感想・評価

しろばんば(1962年製作の映画)
4.0
しろばんばって何だ 角川ホラー文庫かって思ってたが、ワシ知らんかった。以前は教科書にも乗ってたらしい。井上靖の自伝小説。

伊豆の山奥では、夕方に綿くずのように舞い散る不思議な白い生きものが浮遊しはじめる。村の子供たちはこの生きものを夢中で追いかけ廻し~
と美しいタイトルバックで説明してくれる。要は雪虫のことらしいが、はて雪虫というのが分からない。ま スカイフィッシュ的なものということで・・・

舞台は大正四、五年の伊豆。幼い洪作少年の目からみた四世代にも渡る家族親戚、本家との関わり。そして離れて暮らす実の両親、おぬい婆さんとの二人暮らし あこがれのさき子叔母との交歓がつづられる。

洪作少年は少しずつ周りの世界、己の境遇について考えはじめる。彼は行動の途中で急に引き返すということをよく繰り返す。大人にはきかん坊と映るが彼には正当な理由がある。たまたま出生の秘密を聞いてしまったが、まだ本当の所はよく分からない。ただ近くにいる人と離れたくないだけ。

おぬい婆さんというのは曾祖父の妾で血縁はない。洪作を人質にというのは満更でもなく彼女にとっての安全保障だ。うちにも似たような骨肉の光景があるからよく分かる。上の家、本家からしたら仇敵のような人で煙たがられている存在だ。
坊、ぼうと構うあの溺愛ぶり。おめざに飴玉をやり、たまに作るライスカレーとあの土蔵での暮らしは中々に楽しそう。

原作ではさき子姉ちゃんとおぬい婆さんはもっともっと犬猿の仲のようだ。女学校出で学校の先生になるぐらいだから、けっこう気が強くておぬい婆さんなんかピシャっとやりこめる。洪作はばあちゃんも好きだし、さき子姉ちゃんも好き。でも段々と、この好きはちょっと違う種類の好きなのだと気づき始める。

生徒に人気のあった山田吾一の中川センセイは、デキ婚の責任をとらされ二学期末で別の離れた学校へ飛ばされる。思えば急に変なタイミングで移動になる教師とかってたまにいたが、何かやらかしたに決まってるんだよな。『金八先生』で学校に怒鳴り込んでいったのは、この時の意趣返しだったんだな。(役者の声って変わらんなぁ)

山の景色 手の届きそうな星空 部落を駆け回る子供たち めんこ遊びに相撲 しろばんばが現れるまで一日遊び続ける 汗をかいたら村の温泉へ うらやましい環境 
あの、持久走あるあるに笑った 一緒に走ろうなって言っときながら、途中から俄然やる気を出してぶっちぎる奴 友だちなくすぞー

ふすま越しの箱根八里 ~箱根の山は天下の険
泣く代わりに初めて自分の意思で机に向かった。そして友だちみんなで天城トンネルへ。裸の子どもたちが一心不乱に歌いながら行進していく。旧日本兵の姿を彷彿とさせる異様な画面だったが、少年時代の終わりとノスタルジー、そしてフルチン愛に満ちた作品でした。

⇒ドラマ版を小杉勇が監督している
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