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ある日、ピナが…のbennoのレビュー・感想・評価

ある日、ピナが…(1983年製作の映画)
4.1
シャンタル・アケルマン監督作品…7作品目


天才舞踏家ピナ・バウシュ…彼女が率いるヴァパタール舞踏団のリハーサルや本番公演の断片にダンサーたちのインタビューを織り交ぜた映像作品…


“This film is more than a documentary on Pina’s work, it a journey through her world, through her unwavering quest for love.”

この映画は単にピナの作品のドキュメンタリーにあらず…彼女の世界、不屈の愛の探究への旅路なのです

        ー シャンタル・アケルマン ー



ヴェンダース監督《Pina ピナ・バウシュ〰︎》では言葉には出来ないピナの表現を様々な場所という空間の中で描いた見事な映像作品でしたが…アケルマンは独自の全く違ったアプローチです

距離感が近く、親密で感情的…ダンス映像らしい全体を捉えたショットが少なく、よりエモーショナルな表情や動きを強調的に魅せます

こうゆう映像が撮れること自体アケルマンとピナの友好な関係性も窺え、ピナの懐の深さも感じます

クロースアップにスポットライト…女性ダンサーが頭を抱えるようなポーズ…手が額から頬までゆっくり滑り、バックに流れるのはエディット・ピアフの♬ La vie en rose…曲はバラ色なのに、見事な憂鬱の表現…

また背中がパックリ開いた黒いドレスを着た男性ダンサーはとてもエキセントリックにバレエのDéboulé(早くクルクル回る)…Tour en l’air(飛んで回る)…Jeté (空中で素早く足を交差)をイライラしながら繰り返します

お気に入りのシーンは…「自慢するものは?」と尋ねられたひとりの男性ダンサー…彼はアメリカに居た時に学んだという手話を披露…それは本番の演目としても登場します…ガーシュインの曲 “The Man I Love”の歌詞を手話…それだけなのにとても感動的…

手話の意味は理解が出来ませんが…感情がストレートに刺さります…それが真髄…その手話の美しさ、指先まで意思を持った柔らかで滑らかな動き…手のダンス…素敵〰︎ෆ*

Un jour Pina a demandé… (ある日ピナは尋ねた…)とタイトルにもあるようにピナは常にダンサーたちに質問攻めだそうです

「《愛》について思い浮かぶことは…?」

人生は愛だけではないと答える者もいれば、大抵いつも失敗に終わる…また、それはおとぎ話…ひとりとして同じ答えはない…常に何かを感じ、それを言葉にする…それがピナの表現者としての根源でもあるように感じました…

ラストにアケルマンが “Pina, how do you see your future?”と質問…

彼女が答えたのは… “…strength and love…”

とても彼女らしい…最後にピナの笑顔が見れたのも嬉しかったです…ෆ*



thanks to; ゴリアテさ〰︎ん 。.:✤*゜
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