素晴らしい。
実際に起こってそうで、リアルだった。
内情を知ってないと描けないような緻密さだった。
日本航空123便の機長の「オレンジエア」問題を彷彿とさせる。
真実を知った者が消えてゆくのは現実世界にも、知らないだけで沢山あるんだろうな。
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音声に注目した作品なので、音響空間に没入してゆく感じが面白い。
また、視界も主人公の視点で推察する時の没入感がいい。
ファーストカットの飛行機内部を機長室からずっと後ろへトラックバックしてゆく長回しは印象的。
あ、そうか。もう一度ここを見返すと面白いではないか。さすが。
ダニエルクレイグの007のオクトパスか何かのファーストカットで、登場人物を横からフォローし続ける長回しの前後ろ版で面白い。
主役のビジュアルと淡々としたドキュメンタリー密着のような自然さが素晴らしいので、それだけでも他作品の中で群を抜いて印象的。それに脚本や演出、音響空間も徹底されているのでもう素晴らしい。
スノーデン味がある、静かにヒリヒリする感じ。
嫌味で胡散臭い上司が最後には味方だったという時間差のバディ感。
聴覚過敏で周りに理解されないイライラと孤独。
ドライブレコーダーで日付や行動を辿る一見単純なシーンも、後々につながるので見返すと面白い。
ポロックも主人公も..
主人公が最後に救われないのが本当にリアル。
でも知らないだけでこういう事はあるんだろうなと思った。
耳の寄りカットを時折入れているのが、なるほどここに帰結するのかと。
いい事してるのに、耳の力が優れていたが故に与えられた代償。
何だか歯痒い。
わたしも駅のホームのうるささに耐えかねてノイズキャンセラー目的でエアーポッズ付けながら発狂しそうになるので、こういうキャラを描いてくれてうれしい。
しかし、有能過ぎる部下は時に嫌煙されるが、いざと言う時に頼りたくなるんだなあ。
部下の技量を最大限過不足なく見抜いた、ポロックの判断力と計算。
遅過ぎた発見だが、そのラグが全国公開の可能性を確実にしたのかも。
何とも、歯痒い。
そして、最後に勝つのは、アナログ。
湖に埋めたブラックボックスを、肉声の目印で隠しておくとは。
さすがです。
隠すという事に於いては、人の頭に勝るものは無いかもしれないね。
ラスト、ハンドル握るしかできない、エンジンも切れない、ブレーキも効かない、ハックされて何もできなくなった車が恐怖で憎い。
オートマとか、AIとかオール電化とか、結局はハックされたり誤作動起こしたらゴミでしかない。
自分の言うことを聞かなくなる機械なんて、火事や天災と同じだなとつくづく感じた。
マニュアル車最高、アナログ最強。
温厚な主人公がブチ切れる箇所の演技と演出が最高。
しかしまあ、よくもこんな山奥の水溜りにポロックもかくしたよね。
しかも、それを別の事故の捜査中音声ファイルに細工して印すなんて。
ポロックはアナログの使い手だな。
捜査対象物が不当に押収される流れを読んでたんだな。さすが。
しかもあの汚れたドブのような水たまりの中。主人公が探し出すと読んでいた判断力も素晴らしい。
最後、この温厚な主人公が脱出の為に猛ダッシュするシーン。
そして車がおかしくなり、猛スピードの中ハンドルを握るしかなくなるシーン。
激しいし、悲しい。
ポロックの遺体や、主人公の遺体がどう発見され、報道されたのかは描かれていない。
彼らに抹消されていったのなら悲しすぎるな。
これ、レンタルなのに、こんなに悲しい結末なのに、こんなにシリアスなのに、何回も観てしまう。面白いし、悲しい。
この作品力、素晴らしい。
音響音楽も、素晴らしいんよね。
最初あたりの登場人物の端々にも、後につながるセリフが散りばめられている。
脚本としては、キレッキレですごく無駄がない。
どこかで観たと思った。
イヴ・サンローランだ。
ピエール・ニネ、素晴らしい。