むっしゅたいやき

都会の女のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

都会の女(1930年製作の映画)
4.0
私の中で、純朴な青年役を演じたらピカイチのチャールズ・ファレル主演作。
更に久し振りのドイツ表現主義、F.W.ムルナウ監督作品とあって楽しみに鑑賞しましたが、充分その期待に応えてくれた作品です。

本作は前半をシカゴのダイナーを主に、後半をミネソタの広大な小麦畑を持つ農場を舞台に展開します。
その往路に当たる、列車を降りてからの小麦畑での戯れの描写が素晴らし過ぎる。
スピード感の有る横移動ですが、さざめく小麦の穂先、風、幸せそうな二人の笑顔や嬌声と、多幸感に満ち溢れています。
それはモノクロームの作品なのに金色の小麦畑と青空が目に見える様な程で、正に映像表現の極地と言えるもの。
この場面だけを幾度となく見返したくなる程でした。
また馬の躍動感は流石にムルナウ、と言った所で、疾駆する馬を『ノスフェラトゥ』と同アングルで撮ったショットが美しい。

物語は田舎の固定観念を若い二人が打破する、と言ったモノでですが、この際のチャールズ・ファレルのこれまた情けない顔芸が見られます。
またこの農作業者達が、良くも悪くもアメリカン・レッドネックの特徴を現していて、"今も昔も変わらないな"などと変に感慨深い物が有りました。

ストーリーは予定調和な面も見られますし、説明不足な面も有りますが、それを補って余りある、ムルナウの面目躍如たる映像表現を楽しめる作品でした。
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