あーち

余命10年のあーちのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
4.6
青春18×2を観た後無性にみたくなった為3回目の鑑賞。
今現在私が1番好きな映画はこの作品。
この映画は画の美しさが顕著で、明確な年月日を示さずとも季節の植物や風物詩で時の流れを現しており、画面いっぱいに広がる季節の“色”がそれを感じさせてくれる。一気に流れる季節と共に楽しい思い出も増えていき、まつりの『生きたい』という気持ちが強くなっていく。しかし季節が流れるということはまつりの死が近づいているということでもあり、もちろんまつりはそれに気づいているから葛藤していて、中々前にも進めず和人や家族に辛く当たってしまう。段々とやつれて細くなるまつりの姿や、「私の身体実験台に使っていいよ」という生きることを諦めた象徴ともとれる言葉は何度観ても胸が締め付けられる。それを表現する小松菜奈の演技力にも惹き込まれた。映画冒頭と終盤でまつりは和人に生きて欲しいと同じ願いを伝え、和人は2回とも「わかった」と伝える。同じような会話だが、冒頭と終盤では意味が全く違っていることも時間の経過の残酷さを伝えている。両親にだけ『生きたい』という本音を伝えて抱き合うシーンや、走馬灯のようにまつりの理想が流れるシーンは普段強がるまつりの繊細な弱さと本音を見事に表現していた。
王道のようだが、ただそれだけでは終わらないリアリティさ、切なさ、儚さ、美しさ様々なものが詰まった作品だと感じた。
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