経年変化さんの映画レビュー・感想・評価

経年変化

経年変化

美しき仕事 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.6

奇跡の映画。比類なき妙技。もはや物語る事を放棄した建て付けながら映画を信じる者にとってはこの在り方こそが最適解なのだと思わせてくれる。被写体の身体性と相まって乱反射する抑圧/解放のコントラストが問答無>>続きを読む

マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.0

腕の傷口が完治したのもウジ虫のおかげだろうしちゃんとタンパク質も摂れるしで、ジョージ·ミラーが描く世紀末は全く無駄無く回っている。とても優しい

関心領域(2023年製作の映画)

4.0

通勤時間0分のユートピア。何一つ見せない演出を聴覚で補完、震える五感。げに恐ろしきはアウシュヴィッツの女王。無関心でいることの害悪性に蝕まれていく感覚。いつしかそれすらも麻痺し始める。現代をドキュメン>>続きを読む

ユニコーン・ウォーズ(2022年製作の映画)

4.0

聖書講解を創世で結ぶことで今日的な含蓄が備わり、反芻を促す。愛憎の共存ほど厄介なものはない。『チリンの鈴』で心へし折られた記憶がよみがえった。ドラッグでキマるシーンが秀逸。レインボームカデきしょかわ

若武者(2024年製作の映画)

3.6

そのうち空見上げて「誰のバハムートだよ」とか言い出すんじゃないかと思って冷や冷やしてたけど最初のヤニカスに対する口撃はいいぞ永遠に言ってやれってなった。誰もがではなく誰かが観たい映画を作る、を至上命題>>続きを読む

愛うつつ(2018年製作の映画)

3.8

愛しているからではなく愛していた証としてのSEX。二人にとっちゃ通過儀礼なんですね。あれが無いとお互い前に進めない。細川岳がもれなくクズなのでその寄る辺なき表情がなかなか味わい深い

ミッシング(2024年製作の映画)

3.8

あれだけ焦燥と憔悴の渦中にあっても夫婦に温度差なんて全く無いと思った。あそこで自然に「この子が無事で本当に良かった」という言葉が出てきたのならこれからの歩みを想像するのはそう難しくない。石原さとみの説>>続きを読む

東京ランドマーク(2019年製作の映画)

3.2

切り貼りされた生活風景と発せられる言葉の行間から推察する無軌道マンの胸の内。煙草も酒も飯も何一つ美味そうに映さないカメラ。バルコニー裏の校庭とそこではしゃぐ児童が良いアクセントに

ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.2

純粋に正しくあろうとした者によって場が制御不能に陥ってしまう一部始終に慄く。ルービックキューブのアルゴリズムをいとも簡単に理解してみせた少年を王として君臨させる態度…アイロニックな精神ここに極まれり

ぜんぶ、ボクのせい(2022年製作の映画)

3.2

ゲスオダジョーが全部持っていくという笑。メンツはすごいんだけどどうにも消化不良で。川島鈴遥はいずれ来そうな予感

トマホーク ガンマンvs食人族(2015年製作の映画)

4.0

邦題きも。でもおもろ。清々しいほどに人体を冒涜してみせる胆力。一瞬で嫌悪感を催させる女性の扱い方には絶句。時折飛び出す気の利いた台詞でバランスをとりながら。「賢い男は結婚しない」

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

3.8

猿と水と空の共演。違和感のない視覚効果についに人類はここまで来たかと感慨ひとしお。神格化され口承対象となっているシーザーの声が虚しく木霊しながら、共存の可不可という主題へと合流していく顛末は観ごたえあ>>続きを読む

よだかの片想い(2022年製作の映画)

4.0

縦軸となる恋愛譚を執拗にこねくり回すことなく文学文学していて良かった。顔の痣が関わりを持つべき人を選ぶ篩となる。二人の躍動でこの物語が閉じられた事が何よりも嬉しい

正義の行方(2024年製作の映画)

4.0

各々がその立場においてすべき事をした、又は現在進行形で今もしているという事実を淡々と積み上げていくアプローチが奏功して重厚な仕上がり。幾つもの“正義”が確かに存在していた。なんてことを思い返しながら被>>続きを読む

胸騒ぎ(2022年製作の映画)

3.6

悪手を重ねた結果の自縄自縛の極み。一人娘が喚いてるのに快楽に耽る選択は全力で共感した。躊躇なくぶん投げられるコーヒーカップ、ねちっこい投石が地味に怖い。なんなら凶行動機不明ってのが一番怖いまである

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.0

なかなかに岩井俊二なんだけど街の猥雑さやニケツバイクなんかが台湾映画の原風景を想起させるハイブリッド仕様。鑑賞前からの“不在”の予感をどう処理させてくれるのかという点にも関心を向けていたら思いのほか直>>続きを読む

余命10年(2022年製作の映画)

3.2

なんならちょっと引きながら二人の恋愛事情を観察していたけど家族とのあれこれになると不意に目頭が熱くなる。松重豊の涙、美しかったなあ

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)

3.6

そのへんの日本人が監督してたら美談に振り切ってきそうなところをA·アラリが否定してくれている。みんな上手いけどやっぱイッセー尾形なのよ…

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022年製作の映画)

3.6

手垢のついた手法でありながらもちゃんと刺さるものはあった。イケイケドンドン!

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.8

『白熱』のキャグニーを観て「アホ軍団」って言ってんの笑う。坂井真紀が鮭の皮を綺麗に剥がして旦那のシロメシに乗せる。うーん、愛ですね、愛

空白(2021年製作の映画)

3.8

悲しみと憎しみの連鎖に折り合いをつける難しさ。微妙な温度変化を掬い取っていくなかで、緩衝材に徹する藤原季節の存在は無視できない。このさき古田新太が謝る日が来るとしたらそれはようやく訪れる始まりの日なの>>続きを読む

ひらいて(2021年製作の映画)

3.8

「弱くて優しくて狭い世界にいるからでしょ。一緒の世界にいるフリして見下して安心してる」「一度ぐらい他人に向かって俺に向かってほほ笑みかけてみろよ」綿矢りさが紡ぎ出す言葉の儚さ。そこで終わるんかという驚>>続きを読む

少女は卒業しない(2023年製作の映画)

4.0

こういうのほんと弱い。遠い昔に置いてきた出会いと別れの悲喜交交をこうしてまた目の前に差し出してくれたこと、感謝しかない。個人的ハイライトは小説を交換するところ。あれは反則なのです

少女は卒業しない エピソード0(2022年製作の映画)

3.8

逸材集う。本編掘り下げに大いに貢献してくれる。オールアップ時の河合優実のお辞儀角度が人間性を証明している

やくたたず(2010年製作の映画)

3.6

一面の雪景色と相まって刹那的。斜面乗り越え道路をショートカットして車に飛び込む。この一連の流れが格好良すぎた。「車無いっす」の絶望感

長浜(2016年製作の映画)

3.8

規則正しく打ち寄せる波の運動と音、石橋静河の身体性が生み出す不規則なリズムの掛け合い。ワンピのドレープ感でさえも美しい

八月八日(2016年製作の映画)

3.6

『長浜』との対比。石橋静河に内在するものが言葉として徐々に可視化されていく面白可笑しさ

殺人鬼の存在証明(2021年製作の映画)

3.8

Aについての物語だと思ったら実はBについての物語だった、を強引な舵切りで突き付けてくる驚きの第7章。破綻上等精神で大胆に振り切っていく様は90年代量産の異常犯罪映画と空気感を共有していてむしろ大歓迎。>>続きを読む

人間の境界(2023年製作の映画)

4.2

多視点的に国境界隈を立体化していく叙述が没入を誘う。難民の押しつけ合い、ひいては遺体の押しつけ合いにまで悪化を辿る人道外れた愚行を目の当たりにしつつ、コロナという台詞が出てきた瞬間、「ああ…これは本当>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.8

3周回って面白い。これうちらの映画だから人間はあっち行っててねみたいな前回同様の潔さ。久々にエジプトで再会した瞬間、おま貸した金返せやーみたいなノリで突っかかっていくゴジラさん好き。良い寝床見つけた猫>>続きを読む

シティーハンター(2024年製作の映画)

3.8

期待を超えるもっこり映画。G9で赤クーパー最&高。唐突なハンマーとバニラカーに思わず小躍り

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.6

安定のミスコミュニケーションとディスコミュニケーション。こちらが傍観者でいることを許さないカメラの置きどころと距離。あらゆる多元論を丸ごと呑み込み異次元の地平へと連れ去る終盤の転調に畏怖。なんだか寒気>>続きを読む

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

3.8

まあスピルバーグなら手堅く感傷的にやりそうではあるけど自分はベロッキオのこの余白量が好きなので。そこは各々で補完しなさいよと観る者の知性に訴えかけるいい意味での不親切さが助かる。爆音上映案件の仰々しい>>続きを読む

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

4.6

誰かがベニーを救えるわけでもなく、誰もがベニーを救えずにいるわけでもない、あくまでも現在進行形の実像を提示し続けるシンプルな姿勢に胸を打たれた。彼女のこれからは決してひらけてはいないのに最終盤では清涼>>続きを読む

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