遠くの声、絶え間無い銃声、
通奏低音の焼却炉の音に
冷静で抑制的なシーンが続く。
静かな苦い怒りが喉に貼り付く。
全伏線が見事に回収され、
人類の愚劣さの物語が終わり、
刺さって抜けない台詞が残る。
「君は僕の絶対だから。」
悲劇だったのかどうかは
シドで無ければわからない。
インタビューを積み上げる
誠実な手法が時代を映す。
閉鎖社会への告発ではなく、
単なる無理解や微妙な発言が
歪みを増殖する不安の映像化。
ラストシーンに救いは残る。
重層構造が上滑りして
事件の真相に焦点を結ばない。
福士松本パートが薄味なので
福地桃子の存在が一際光る。
吉田監督に次第次第に
追い詰められた観客は、
不寛容なこの社会に
生きる覚悟を強いられる。
時代劇という格式の中で、
役者陣の能力が顕となり、
白石さんらしい強引さは
恐ろしい完成度に昇華した。
歌詞を追うとボブが社会の
理不尽と暴力に強く反発し
抵抗した事に揺さぶられる。
生き方そのものが伝説。
この過酷非道な「国境」という
現実の咀嚼は重く辛すぎる。
報道しないマスメディアを
非難するのすら他人事のよう。
前半のトリッキーさが
無ければ結構ベタな展開。
でも見上愛の懸命な芝居は
素直に好ましかった。
丁寧に発言を収集した先に
浮かぶ「科学」という名の闇。
時に権力は誤りをおかすから
推定無罪を忘れてはならない。
背景の陰鬱さと10年の歳月が
事件とその関係者を変質させ、
シリアルキラーものとして
秀逸な構造を造り出した。
不穏な事象が積み上がり
不快なラストへ雪崩れ込む。
宗教的隠喩がわからないので
まだマシなのかも知れない。
その頃、幸福だったのかって、
見る角度で異なるものだけど、
少なくともジョンは楽しそう。
いずれもある意味真実なんだね。
好むと好まないとに関わらず
シリーズは大きく舵をきった。
予見される独善的な虐殺を
見せられる事は拒否したい。
若手女優陣3人の啖呵と
柄本明と火野正平はいい味。
でも、筋立てと殺陣は凡庸で
時代への怒りは余りに薄味。
甘くやわいストーリーだけど、
藤井組での清原伽耶の存在感と
18年という設定が活きてる。
きっと多くの人に響くと思う。
後半こちらの安易な筋読みを
嘲笑うかのように、対峙すべき
本当の相手が最後に立ち現れる。
濱口監督のマジックは奥深い。
奈衣瑠さんの深化に共鳴して
呼吸するかの如く一歩ずつ
主人公が前進するのは楽しい。
にしても奈衣瑠ちゃん良く喋る。
断片的な報道や主張を超えて、
頭の中の戦争という観念が、
リアルに寄り添った映像により
鮮明な現実として焦点を結ぶ。
複雑な時代の人物相関を
あえて錯綜する時制で
陰鬱に見せる手法だが、
先が読めると醒めてしまう。
物語は有りがちでも説得力あり。
前半を支配するインストには
引き込まれたが、惜しくも、
最後の一曲が弱かったかな。
若さと惑いに満ちた女子の
生きにくさや苛立ちを
真っ直ぐ丁寧に描いてみせる。
「宣戦布告」が結構刺さった。
陳腐な猿族の勢力争いに、
人類の出番も全く無いし、
色々辻褄合わない杜撰な脚本。
山崎さん褒めちゃ駄目でしょ。
ノワールゆえの乱暴な筋と
ノワールでこその手触り感。
森田想の振り切った演技が
規格外れの物語を仕切った。
中盤まで少し不安だったが、
次第にその細やかな情感に
引き込まれるエッラの表情。
とても幸福感のあるラスト。
どちらの側にもくみせず、
権力が引き裂く家族と
信仰に引き裂かれる主人公の
壮絶な傷が深く印象を刻む。
安定のディンクレイジと
年相応のマリサ・トメイの
息のあったかけ合いが嬉しい。
失敗邦題の酷さも気にならない。
4人の真面目な人生を
彷彿とさせる慌てぶりで、
マリッジコメディの王道。
ベテランの味にホッとする。
POPカルチャー最盛期の
ジャニスはじめ凄い演奏多数。
グルーヴの意味を体感する。
ただラヴィに割く尺が長すぎ。
世界の残虐な現実と
身近で酷薄な身勝手さ。
いずれか、少しだけでも
癒しが芽吹く事を願って。
様々な愛情に恵まれず、
生死の境を越えて見い出す
アダムの孤独のあり様に
怖く震える様な共感を覚える。
物語舞台の手触りと
カガリのキャラが合ってる。
伏線も綺麗に回収されて
こじんまりと完成度高め。
一途なリンダと緩い母親、
可哀想な鶏も団地の騒動も
みんな愛らしく思えてくる。
鮮やかな黄色も好きになる。
魅力に欠ける凡庸な人物像と
平凡な展開に潜む陰鬱な欲望。
間接的表現の後味も厭だが、
日本への造詣も薄気味悪い。
江口の緩急自在な相手との
距離の置き方の芝居に魅入る。
ローカル作品としての温もりを
中条の関西弁が増してる。