耶馬英彦さんの映画レビュー・感想・評価

耶馬英彦

耶馬英彦

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告白 コンフェッション(2024年製作の映画)

3.5

 罪を告白された側の恐怖に特化したホラーアクションで、格闘に慣れていない一般人の登場人物同士としては、リアリティがあって割と面白かった。急転直下の終盤も悪くない。親友同士だから、アクションの最中にも会>>続きを読む

わたくしどもは。(2023年製作の映画)

4.0

 死は、介在的にしか認識されない。生きている人の中に、死んだことがある人はいない。代替的な話として、臨死体験が語られることはある。しかしそれは潜在意識の働きであり、実際に死んだ体験とは本質的に異なる。>>続きを読む

お終活 再春!人生ラプソディ(2024年製作の映画)

3.5

 高畑淳子の歌を一度、生で聞いたことがある。「中島みゆきリスペクトライブ2018歌縁(うたえにし)」のコンサートが行なわれた日本武道館だ。平原綾香、島津亜矢、新妻聖子、中村中、研ナオコ、クミコ、半﨑美>>続きを読む

FARANG/ファラン(2023年製作の映画)

3.0

 登場人物はもれなく頭の悪そうな連中ばかりで、何でも暴力で解決しようとする。主人公も例外ではない。誰にも感情移入は出来ないが、アクションはいずれも迫力がある。それにとても痛そうだ。ゴア描写は控えめだが>>続きを読む

三日月とネコ(2024年製作の映画)

4.0

 ネコ好き3人が一同に介する序盤は、コミュニケーションのぎこちなさが目立って、どうなることかと心配だったが、小林聡美が演じる小説家が登場してからは、物語に安定感が生まれた。やっぱり確固とした世界観の持>>続きを読む

若武者(2024年製作の映画)

3.5

 二ノ宮隆太郎監督の前作「逃げ切れた夢」は、光石研の名演もあって、悪くなかった。痴呆症になるのを恐れながら定年を迎えた主人公が、還暦になってもまだ迷っている。これまでひた隠しにしてきた本当の自分自身を>>続きを読む

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)

4.0

 同じラジ・リ監督の「レ・ミゼラブル」でも、唐突なラストシーンに面食らったところがあったが、本作品のラストシーンも意見の分かれるところだと思う。イスラム青年ブラズは火をつけるべきだったのかどうか、犠牲>>続きを読む

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー(2022年製作の映画)

3.0

 アメリカの黒人が「Black Lives matter」と叫んで、自らの権利を主張した運動がひとしきり続いた後、コロナ禍のアメリカで、黒人の大男が東洋人の老婆を殴り倒す動画がニュースで紹介された。コ>>続きを読む

ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.0

 教育現場が舞台の映画を観るたびに、国ごとにずいぶん状況が違うんだなと感じる。アメリカやフランスの映画では、教師は割と自由で、生徒と同じくらいに登校して、授業が終わるとさっさと学校を出て、プライベート>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章(2024年製作の映画)

4.0

 前編で暴走したカドデがどのように収拾したのか、その訳が明らかになる。かなりSF寄りの設定だが、理解はできる。カドデとオンタンの人格が劇的に変化したのかと思っていたが、そうではなかったという話だ。考え>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

4.0

「住めば都」という諺の通り、人は住み慣れた場所に愛着を覚えるようになる。それは場所だけではなく、仕事も同じで、慣れてしまうとその仕事が好きになる。脳は作業興奮を覚えるから、もっと仕事が上手くいくように>>続きを読む

ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版(1973年製作の映画)

4.0

 ジョージ・オーウェルの小説「1984」と同じく、未来のディストピアを描いた作品である。登場する施設やデバイスや人物の衣装などは、いかにも50年前に想像した50年後で、これが精一杯だろうと窺える。ただ>>続きを読む

湖の女たち(2023年製作の映画)

4.5

 考える要素がありすぎて、なかなか整理のつかない作品である。大作と言っていい。最初は高齢者施設での出来事からはじまる。事故か事件かはまだ不明だが、高齢の老人が亡くなった。その老人には過去があり、夫人の>>続きを読む

ハピネス(2024年製作の映画)

3.5

 日曜日のシネコンなのに、観客はひとりだけ、つまり貸切状態だった。しかし190席がひとつしか埋まらないほど、悪い作品ではない。蒔田彩珠と吉田羊の演技は満点だった。

 資生堂パーラーのスペシャルカレー
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ティアーズ・オブ・ブラッド(2022年製作の映画)

3.5

 アクションやミステリーで過去が謎の人物というと、どうしてもCIAやMI6のエージェントや軍の秘密部隊の一員などを思い浮かべてしまう。本作品の主人公レオは、体格的に優れているわけでもないから、どういう>>続きを読む

碁盤斬り(2024年製作の映画)

4.0

 主人公柳田格之進は、清廉潔白を信条に生きてきた。柴田兵庫が主張する、水清ければ魚棲まず、袖の下は世の習いと、不正を是認するような考えには首肯できない。だから藩から不正の族(やから)を一掃することで、>>続きを読む

またヴィンセントは襲われる(2023年製作の映画)

4.0

 邦題に違和感がある。Vincentは英語やドイツ語ではヴィンセントだが、フランス語ではヴァンサンである。ヴァンサン・カッセルという有名俳優はフランス人で、誰もヴィンセント・カッセルとは言わない。本作>>続きを読む

胸騒ぎ(2022年製作の映画)

3.5

 この春、花見に出掛けた観光地で、嫌な光景を見た。40歳くらいの父親と6、7歳の息子がフリスビーで遊んでいたのだが、父親は息子のキャッチの仕方が気に食わないようで、そのたびに強い口調で注意する。母親は>>続きを読む

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)

3.5

 松居大悟監督の作品では「ちょっと思い出しただけ」を最も高く評価した。恋の切なさに加えて、人生のやるせなさ、ほろ苦さも一緒に表現した、奥の深い作品である。「君が君で君だ」や「くれなずめ」などのオリジナ>>続きを読む

フューチャー・ウォーズ(2022年製作の映画)

4.0

 邦題の「フューチャー・ウォーズ」は未来の戦争みたいで、激しいアクションものを想像させるが、実際の中身はSFコメディである。原題の直訳を少しひねった「未来のお尋ね者」がよかったとおもう。
 流石に哲学
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トランスフュージョン(2023年製作の映画)

4.0

 オーストラリア映画というと2022年に日本公開された「ニトラム」を真っ先に思い出す。父親の放任主義と母親の権威主義によって精神が崩壊し、無差別乱射事件を起こしてしまった青年を描いた、実話ベースの作品>>続きを読む

人間の境界(2023年製作の映画)

4.0

 脱北者を扱った2024年のドキュメンタリー映画「ビヨンド・ユートピア 脱北」で取り上げられた家族の脱北は、険しくて悲惨な道のりだと感じたが、本作品で扱われた難民の運命は、とてもその比ではない。悲惨と>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

4.0

 前半だからなのか、風呂敷を広げるだけ広げている感じだ。

 登場人物は二種類に分かれる。変わる人と変わらない人だ。ふたりの主人公は、出来事に影響されて成長していき、変わっていくが、それに対して、他の
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マイ・スイート・ハニー(2022年製作の映画)

3.5

 恋愛経験のない、少年の心を持ったまま大人になった男の、初恋物語である。芸達者のユ・ヘジンが流石の演技をみせていて、とてもほっこりする。食品添加物の害などがさり気なくテーマにされているところが現代的と>>続きを読む

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ(2022年製作の映画)

3.5

 ジョディ・フォスター主演の2021年の映画「モーリタニアン」では、グアンタナモ収容所に15年間も監禁されたモーリタニア人の青年モハメッド・ウルド・スラヒを救い出す弁護士の奮闘が描かれていた。収容所で>>続きを読む

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.0

 西島三重子の「千登勢橋」という歌に、次の歌詞がある。

 胸の想い言い出せなくて 遠くでカテドラルの鐘
 思わずこぼれた涙を拭いて 無理に笑った風の中で
 心のすべて燃やした恋を いつも見ていた橋の
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システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたい(2019年製作の映画)

3.5

 2022年の邦画「こちらあみ子」に似ているかもしれない。あみ子を演じた大沢一菜(オオサワ カナ)を見事だったと褒めたが、本作品でベニーを演じたヘレナ・ゼンゲルの演技は、超絶の域に達するほど凄かった。>>続きを読む

正義の行方(2024年製作の映画)

4.0

 DNA(デオキシリボ核酸=遺伝子の本体)の鑑定について、以前から考えていることがある。国家権力が信頼に足る国では、生まれたときにDNAを採取してそのゲノム配列を記録しておけば、犯罪の捜査がやりやすく>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

 森のシーンがとても美しい。殆どのシーンのBGMは重厚な弦楽四重奏だが、一度だけ、タクミの娘のハナがひとりで歩くときはシンセサイザーの電子音が響き渡っていた。メロディラインに無理がなく、森をはじめとし>>続きを読む

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

3.5

 宗教は、宗教団体になった途端に、権威主義に堕し、場合によっては政治にまで影響力を発揮して、人々を不幸にする。本来は人間を不安や恐怖から救い出すはずの宗教が、宗教団体自身を守るための大義名分となってし>>続きを読む

革命する大地(2019年製作の映画)

4.0

 1776年6月にアメリカのバージニア権利章典、1789年8月のフランス人権宣言が採択された。いずれも、基本的には人間の自由と平等の権利を謳ったものである。それから200年以上経過したが、いまだに自由>>続きを読む

マリウポリの20日間/実録 マリウポリの20日間(2023年製作の映画)

4.0

 1991年のソビエト連邦解体後、ウクライナ国内では、親ロシア派と反ロシア派の対立が続いている。政権は親ロシア派と反ロシア派が入れ代わったりしていて、一筋縄ではいかない複雑な状況だ。親ロシア派の武装勢>>続きを読む

あまろっく(2024年製作の映画)

3.5

 細かいところまで、よく考えられている。笑いながら、感心しながら、楽しく鑑賞した。
 愛子と竜太郎のイニシャルAとRは、そのまま、尼ロックのイニシャルになっている。映像の見せ方で、語らずとも分かる仕掛
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陰陽師0(2024年製作の映画)

3.5

 主人公が同じとあっては、どうしても滝田洋二郎監督、野村萬斎主演の「陰陽師」と比べてしまう。佐藤嗣麻子監督は、ご主人の山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」にあやかってかどうかはいざ知らず、本作品を「陰陽師」>>続きを読む

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)

3.5

 タイトルの意味はラスト近くになって、ようやく分かる。少なくとも、マンティコア=怪物ではない。原題は単にマンティコアである。邦題は観客を惑わす方向でつけられていて、よろしくない。
 ただ、ラスト近くに
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ザ・タワー(2022年製作の映画)

4.0

 ギョーム・ニクルー監督の作品は、2020年に「この世の果て、数多の終焉」を観た。2018年製作の戦争映画だが、公開は2年後だった。
 本作品も製作は2022年だが、公開は2024年だ。そして、本作品
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