しゅうさんの映画レビュー・感想・評価

しゅう

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旅路の果て(1939年製作の映画)

3.4

俳優専門の養老院を舞台にした地味なストーリーではあるが、老いてもなお過去の栄光に縋る虚栄心に満ちた役者たちの姿を見事に描いており退屈しない。
代役専門の大根役者ミシェル・シモンや才能有りながら運に恵ま
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とらんぷ譚(1936年製作の映画)

3.5

才人サッシャ・ギトリが監督主演脚本を手掛けた秀作。
製作陣のクレジットを文字でなく、本人を映すという才気溢れたファーストシーンがまず面白い。
少年の主人公が盗みの罰で大好きなキノコを食べられなかったが
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六月十三日の夜(1932年製作の映画)

3.5

以前観た「或る日曜日の午後」がイマイチな印象だったスティーブン・ロバーツ監督作品だが、彼が忘れられた名匠と言われるのがわかった気がする。
地方都市の4軒の家庭の様々な日常や事件を扱っているが、最初こそ
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地の果てを行く(1935年製作の映画)

3.5

外人部隊を描いた作品ではフェデーの「外人部隊」よりコチラの方が好みである。
ジャン・ギャバン演じる主人公が殺人を犯し逃走、バルセロナにて全財産を掏られ追い詰められ外人部隊に入隊という序盤がテンポ良く好
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外人部隊(1933年製作の映画)

3.2

戦前多く作られた外人部隊もので邦題もズバリそのもの。
放蕩息子が失恋で自棄になり、モロッコの外人部隊に入隊するのがストーリーの軸ではあるが、描いているのはピエール・リシャル・ウィルムと二役マリー・ベル
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にごりえ(1953年製作の映画)

3.9

樋口一葉の短編3本を選んだオムニバス形式の映画。
フランス映画「舞踏会の手帖」を観た時も思ったが、オムニバスというのは普遍的な魅力があるのであろう。
「十三夜」「大つごもり」は元のストーリーの面白さが
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私の殺した男(1932年製作の映画)

3.8

ルビッチ監督には珍しいシリアスなドラマ。
「西部戦線異状なし」に自分の殺した兵士の事を思い苦悩するシーンがあったが、今作はフランス兵が自分の殺したドイツ兵の家族に会いに行くというストーリーなのでテーマ
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ミラノの奇蹟(1951年製作の映画)

3.9

デ・シーカ監督は「自転車泥棒」「終着駅」などの陰気な作品のイメージが強く好みではなかったが、今作はかなり陽気でファンタスティックな作りなのに驚いた。

善意の塊みたいな主人公トトを中心に貧乏ながら明る
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透明人間(1933年製作の映画)

3.5

フランケンシュタインの怪物、ドラキュラ伯爵と並び、古典ホラーを語るには避けて通れない透明人間。
ジャンル的にはホラーなのだろうが、ちっとも怖くなく笑ってしまう所が多いが特撮の見事さも含めて楽しく観れる
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哀愁(1940年製作の映画)

3.7

ブロードウェイの戯曲「ウォータールー橋」の2度目の映画化だが、戦前作られたジェームズ・ホエール版よりコチラの方が決定版と言える。
ロバート・テイラーは水準だが、ヴィヴィアン・リーは彼女のベストたる好演
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ゲームの規則(1939年製作の映画)

4.0

ジャン・ルノワールの代表作。
上流階級の人々の華やかだが、薄っぺらく虚栄に満ちた姿を描いている。
友情、恋愛、お節介が交錯する様を見事に捌くルノワールの手腕は素晴らしい。
ジャンルとしては喜劇になるが
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救命艇(1944年製作の映画)

3.1

水準以上の作品ではあるが、ヒッチコックとしては凡庸な出来。
ショットの捌きは流石であるが、制約の多い作品なのでサスペンスがそれほど盛り上がらないのは物足りない。
新聞の痩せ薬広告でのカメオ出演が一番良
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失はれた地平線(1937年製作の映画)

3.3

キャプラ作品としてはやや物足りない印象。
出だしの脱出シーンからシャングリラに辿り着くまでのファンタスティックな描写は面白く観れるが、中盤の理想郷の描き方はあまり感心できない。
ハリウッド的に甘いと言
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虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)

3.4

あまりに有名な歌舞伎「勧進帳」をベースにアレンジした黒澤作品。
大河内傳次郎の能や歌舞伎をベースにした科白回しが聞き取りづらいが内容はわかりきっているので問題無し。
森雅之や志村喬も出てはいるがまだ影
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愛怨峡(1937年製作の映画)

3.8

画質、音声共に劣悪で改めて日本映画界がフィルム保存に対して出鱈目だった事がよくわかる。
溝口健二みたいな大監督の作品ですら、これだからなぁ。

余談はともかく、「浪華悲歌」「祇園の姉妹」ほどではないに
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暴力行為(1949年製作の映画)

3.5

ジンネマン監督は「地上より永遠に」などより、やはりこういう作品の方が本領発揮と言える。
追う者と追われる者の行動と心理をガッチリ描いていてサスペンスが盛り上がっていく展開は良いし、下手な回想シーンで話
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裸足の伯爵夫人(1954年製作の映画)

3.0

「イヴの総て」で見事な手腕をみせたマンキーウィッツ監督がハリウッド映画界の内幕を描いたとあれば期待するが結果は失望だった。
金を出したからには落とした帽子も拾わせるという態度のプロデューサーや大衆の中
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恐怖の報酬(1953年製作の映画)

4.7

H・G・クルーゾー監督の代表作。
ニトログリセリンの運搬がメインストーリーではあるが、前半の環境紹介や人物描写をかなり長々と描いている。

シャルル・ヴァネル演じるジョーは人間社会においては恐怖という
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地上より永遠に(1953年製作の映画)

3.1

公開当時はセンセーショナルだったのだろうけど、現在の視点ではさほど感銘は受けず、アカデミー賞大量受賞はしているもののジンネマン監督なら他に良い作品は沢山ある。
軍隊の腐敗ぶりを描いてはいるがハリウッド
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第十七捕虜収容所(1953年製作の映画)

3.7

舞台は捕虜収容所だが、ワイルダー監督らしい明るく肩の凝らないエンタメ作品。
ちゃっかり者のウイリアム・ホールデンを中心に描かれる収容所内の様子も楽しいが、一方サスペンスある緊迫した描写も優れており、ス
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西部戦線一九一八年(1930年製作の映画)

3.6

同年に作られた「西部戦線異状なし」と比較されるが、特にストーリーらしいものがなく、ぶった切るような演出なので全く違ったタイプの作品。
反戦的メッセージが、かなり強烈に刻みこまれるのは共通している。

祇園の姉妹(1936年製作の映画)

4.0

自分にとって溝口健二には時代劇作家のイメージがあったが、「浪華悲歌」と今作を観て現代劇の方がずっと自分の好みである事に気付いた。

「浪華悲歌」ほどの凄味は無いが、行動によって人生を描くというハードボ
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浪華悲歌(1936年製作の映画)

4.2

溝口健二にとっても山田五十鈴にとっても代表作のひとつ。

強かに生きる逞しい女性の姿を描くストーリーは当時はかなり珍しかったと思う。
登場人物は屑ばかりで最後に縋る恋人や家族にも見棄てられるという救い
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人情紙風船(1937年製作の映画)

4.0

山中貞雄の遺作。
長屋の場面の縦の構図や御屋敷の俯瞰気味な横の構図が非常に効果的で現在の眼で観ても優れた作品と言っていい。
ストーリーは悲劇的ではあるが、通夜の場面の大騒ぎや、がめつい大家のユーモラス
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丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)

4.0

「抱寝の長脇差」でデビューし、天才と言われた山中貞雄の数少ない現存する作品のひとつ。
丹下左膳の外伝的作品ではあるが、はまり役である大河内傳次郎が主演なのが作品に厚みを保たせており、何よりコメディとし
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ローマの休日(1953年製作の映画)

4.6

オードリー・ヘプバーンにはもちろん、ウイリアム・ワイラーにとっても代表作のひとつ。
この作品を嫌いな人は居ないのではないかと思えるほど完璧な作品。

何度観ても楽しく酔わされる。

狩人の夜(1955年製作の映画)

3.1

一言で言えば変な作品。
何をしでかすかわからない怖さがあるインチキ伝道師のキャラは面白く、賛美歌を歌って登場したり指に入墨を彫ってたりと風変わりなのは時代を先取りしていたと思う。
髪をなびかせるシェリ
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終着駅(1953年製作の映画)

3.1

劣化版逢びきと言っては気の毒だが、駅が主な舞台で不倫ものとなるとやはり比較したくなる。
デシーカ監督は所々に上手い演出もあるが全てにおいて「逢びき」に劣る印象。
ただ、ジェニファー・ジョーンズはなかな
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バンド・ワゴン(1953年製作の映画)

4.5

「雨に唄えば」はハリウッド映画界を描いていたが、コチラはブロードウェイ演劇界を描いており、甲乙つけがたい傑作。

ハリウッド全盛期のミュージカル映画はコメディとして観ても非常に優れたものが多く、今作も
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ライムライト(1952年製作の映画)

3.9

チャップリン作品最後の輝きと言ってよい秀作。
今までの社会批判や反戦メッセージは影を潜め、没落した喜劇俳優の個人的な悲劇をチャップリン自身の姿を投影しながら描いている。
2時間以上の長尺を自身とクレア
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お茶漬の味(1952年製作の映画)

3.8

小津作品には珍しく子供の居ない夫婦のストーリー。
田舎育ちの夫と都会育ちの妻は倦怠期で妻は旅行やら野球観戦やらと遊びまわってるが、夫は平然としている。
ある日、夫は急な海外出張で飛び立つ。
帰宅してそ
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禁じられた遊び(1952年製作の映画)

4.2

ドイツ機の掃射で両親を失った少女の主人公が農家に引き取られ、そこに居る少年と仲良くなり動物や虫の墓を作ったりと子どもらしく無邪気に死というものを学ぶ。

この辺りはコメディタッチで微笑ましいが、孤児院
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稲妻(1952年製作の映画)

3.4

舞台は東京の下町、産まれた子供の父親がみんな違うだらしない生き方の母親。
長女、次女、長男はそれぞれ違った性格ながら、だらしなさは母親そっくり。
三女だけがしっかり者で、そんな一家の生活風景が三女の目
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雨に唄えば(1952年製作の映画)

4.5

アステアの「バンド・ワゴン」と並びミュージカル映画史に燦然と輝く傑作。
サイレントからトーキーへ移行するハリウッド映画界の内幕がコメディ形式で非常に楽しく描かれていて、コメディ映画として観ても優秀な出
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真人間(1938年製作の映画)

3.5

フリッツ・ラングにしては珍しくコメディ色の強い異色作。
前科者の社会復帰というのがテーマにあるが、肩肘張らずに楽しめるのはよろしい。

渡米後の「暗黒街の弾痕」「激怒」と比べると少し落ちる印象ではある
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嘆きのテレーズ(1952年製作の映画)

3.8

かつてマルセル・カルネの師匠ジャック・フェデーが無声映画として作った事もあるエミール・ゾラの有名文学の映画化だが、文学を映画化するための模範たる秀作。
映画はかなり原作を改変しているし、脅迫者という原
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