そーいちろーさんの映画レビュー・感想・評価

そーいちろー

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ふたりの人魚(2000年製作の映画)

3.8

調べるとロウイエはアントニオーニ、カサヴェテス、フェリーニに強い影響を受けているそうだが、個人的にはどちらかというと、本作に現れたある種のモキュメンタリー感と実験的な映像はゴダール、あるいはカラックス>>続きを読む

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)

3.7

可視/不可視、精神/肉体、そういうものを盲人達が南京で運営する按摩店の興亡を通じ描く。語りは三人称。主人公格のシャオマーは幼い頃に突然視力を失い、自殺未遂をしながらも生きながらえ、成長し盲人達の按摩店>>続きを読む

関心領域(2023年製作の映画)

3.0

極度に無駄な物を削ぎ落とした、無機質で硬質な映画。アウシュヴィッツの隣に住む軍人家族の関心は、そこで生きる人々ではなく、旦那は軍における出世で妻はやっと手に入った理想の暮らしを守ることだ。虐殺されたユ>>続きを読む

デッドマン(1995年製作の映画)

3.8

ジャームッシュって本当に良い意味で常にジャームッシュしか撮れない映画を撮る。本作も結構素直な西部劇。メリーランドから求人が届いたので西部地方に来た会計士のウィリアムブレイク。既に募集は終わり、ちょっと>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.7

不思議な映画。決してハッピーエンドでもないし、かと言ってバッドエンドでもない。西部劇であり、カウボーイものでもあるのだが、そこから想起され得るような勇ましさは主人公のクッキー、その相棒である中国北部出>>続きを読む

わるい仲間 4Kデジタルリマスター版(1963年製作の映画)

3.4

無秩序、非道徳的。いくらでも有り余る時間を無為に過ごすことが正義のように生きる二人の男の様子は虚しさと痛快さが同居している。ナンパした女をなんとか引っ掛けようとするが、思わせぶりな態度ばかりを取られ、>>続きを読む

サンタクロースの眼は青い 4Kデジタルリマスター版(1966年製作の映画)

3.4

二本立ての一本として観た。ただただ主人公が無秩序かつ怠惰、仲間内のなかのなんてことのないこだわりや異性への関心のみである意味で不道徳的に、刹那的に生きているのを含めて素晴らしかった。特に何かこれを観て>>続きを読む

ぼくの小さな恋人たち 4Kデジタルリマスター版(1974年製作の映画)

3.8

「ママと娼婦」よりこっちが好みかな。トリュフォーの「大人は判ってくれない」感もあるし、なんというか思春期のいいしれぬ苛立ちや焦り、よく分からぬ敗北感、甘酸っぱさみたいなのの贅沢詰め合わせパック、みたい>>続きを読む

ママと娼婦 4Kデジタルリマスター版(1973年製作の映画)

3.5

母のような年上女性マリーと娼婦の如く性に奔放なヴェロニカという二人の女性の狭間で揺れ動くアレクサンドルという青年の青春の軌跡もの。アレクサンドルがおそらく何やっているのかよく分からないヒモで、ブティッ>>続きを読む

ソルジャーブルー(1970年製作の映画)

3.8

当時のベトナム戦争におけるソンミ村事件を、かつて実際に起こった北軍による和平派インディアン村落の虐殺行為であるサンドクリークの虐殺を描いた作品。ラストまではよくある西部劇特有の甘ったるい恋愛映画のよう>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

4.0

おそらく、予算はそんなにかかってないはずなのに金をかけても薄っぺらさしか感じない昨今の日本映画(もどき)への強烈なアンチテーゼたりうる、日本映画の歴史に名を刻むべき「戦争映画」である。関東大震災を一つ>>続きを読む

バスケット・ケース(1982年製作の映画)

3.2

ザB級ホラー。それなりに筋立てはしっかりしてて、結合双生児で奇形だった兄を殺そうとした女医(実は獣医師だったことも判明)に復讐を果たそうとニューヨークまで来た兄と弟の話。幽遊白書の戸愚呂兄弟のモデルは>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

4.0

中国版の「マリアブラウンの結婚」だね、これは。3時間弱あるけど、途中途中で劇的なシーンを入れる事で飽きる事なく一気に観られる作品。京劇という中国の伝統演劇を下敷きとして、揺れ動く現代中国に翻弄されなが>>続きを読む

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)

4.5

映画館で初めて観た。35mmで観られる喜び。円熟味を増したエドワードヤンは、どこかかつての彼自身の作品をリミックスするかのように、台北の文教地区の高級マンションに暮らすある家族のひと夏の様子を通じ、生>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

2.8

途中までは助演のポールメスカルもあって、「アフターサン」「アフターヤン」系の死人を思う(メメントモリ)物系で、いい感じかなぁと思っていたら、ラストでシックスセンスじみた展開となり、「ALL OF US>>続きを読む

GONIN(1995年製作の映画)

3.8

石井隆美学が炸裂したフィルムノワール。香港フィルムノワールかペキンパーか、といったような映像美が爆裂し、アウトロー達の企てとその破滅までを見事に描き切っていた。タランティーノは石井隆にも強い影響を受け>>続きを読む

あるじ(1925年製作の映画)

4.2

なんてことない映画である。事業で失敗し、不満を募らせ家族にあたることでしかその憂さを晴らせないヴィクトル。家族を支えつつ、ヴィクトルの痛みに寄り添いつつ健気に家庭を盛り立てる妻イダ。その二人を支えるお>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

3.8

吸血鬼ってなんなんだろう、と思っていたし、なぜ十字架に弱いのかと言うと、この作品を観るとよく分かった。要するに吸血鬼も悪魔狩りの一種で、さまざまな伝承があるんだろうが、何らかの疫病にかかった人を人々が>>続きを読む

ミカエル(1924年製作の映画)

3.8

ドライヤーは変にプロットにこだわらず、シンプルな筋で壮麗かつ荘厳な映画を観せてくれるため、好きだ。背景には強固なキリスト教的価値観があり、本作は要するに堕天使ミカエルに関する物語を、孤独な老画家とそこ>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.2

とりあえず、無事に本作が日本公開されて良かった。下手するとハリウッド映画史に残る一本と思えるぐらいの労作、傑作だった。本作は「原爆」という大量破壊兵器を生み出してしまった天才科学者の苦悩と孤独を描いた>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.3

秒速5センチメートルと花様年華を足して、両者の濃密な部分、えぐみをこそげ落として、そこに文化の違いを足し込んだような映画だった。男の方が初恋とか叶わなかった恋愛にこだわるってのは万国共通なのかなぁと思>>続きを読む

ソウルメイト(2023年製作の映画)

3.7

想定していた内容より、かなり情緒的な展開かつ昔の韓流的などんでん返し展開が後半立て続けに発生するのだが、プロットの勝利、というかかなりこじつけ感はあれど、前半からの謎(誰がコハウンの名前で、コハウンの>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

3.3

ソニマージュと後期の作品を自称していたゴダールだが、本作はそのより原始的な姿、というか本当に絵コンテを見せてもらった感じ。現実を知ってるから、ってわけじゃないが、濃厚な断念と死に満ちた映画ではあった。>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.5

設定が色々ありえないし、おそらく本作の最大の魅力の一つである狂児と聡実の疑似的な同性愛的関係性もあまりピンと来るものでなかったのだが、映画としては非常に良かった。山下敦弘監督は、古き良き日本映画の作り>>続きを読む

ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

3.5

当たり前だけど、タルベーラ映画だからよく分からん。酷く荘厳で、美しい白黒画面。過剰なまでの長廻し(今回改めて観ると、ここまで長廻しをしようとすると、相当に作為的なカメラポジションが求められることがよく>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

タイトル通り、3時間ひたすらボーがおそれているだけの映画ではある。何を恐れているか。強大な母性愛であり、その実像である母だ。母を恐れるあまり、あらゆる外部の世界を恐れるボーの唯一の救いは思春期に出会っ>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

3.5

移動プラネタリウムのナレーションに至るまでの壮大なフリに近かった。そこでドカンと仕留める感じは、嫌いではない。三宅唱の映画は静かだ。静寂がかえって、その静寂に潜む音が反響してしまうぐらいに静か。ざらつ>>続きを読む

砂の器(1974年製作の映画)

4.2

橋本忍特集の2本目。前半のある種凡庸な刑事サスペンスから、後半の犯人である和賀英良の犯行動機の説明を丹波哲郎演じる刑事が説明する場面からのハンセン病の父と、息子の裏日本を南下していく旅の様子と、今は新>>続きを読む

影の車(1970年製作の映画)

3.7

新文芸坐の橋本忍特集で「砂の器」と一緒に観た。ありがちな転落劇ものではあるのだが、構成が秀逸。狭い団地で子供のいない妻との結婚生活に息苦しさを感じている旅行代理店に勤める主人公は帰宅時のバスの車中で偶>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

ヨルゴスランティモスは現代映画界において、最もヘンテコで非道徳な作品を創り出している。そして、どの作品においても非常に効果的に「動物」を用いており、必然的に作品に現れる人間達との対比により、「人間とは>>続きを読む

3-4x10月(1990年製作の映画)

3.9

初期の北野作品は、本当に無駄なBGMが用いられない。そして極端なまでに日常と非日常たる暴力の放出が突然起こる。それはもはや日常と非日常が地続きである、とかそういうレベルではなく、日常の中にそういう暴力>>続きを読む

シェイン 世界が愛する厄介者のうた(2020年製作の映画)

3.4

音楽ドキュメンタリー映画として音楽も良かったし、ポーグスの背景にある歴史や社会的事情も分かりやすく説明されていて良いドキュメンタリー映画だった。

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

2024年1本目。あらすじをなんとなく調べたら、ミッドサマーぽい感じだったので観に行った。

母を自殺で喪ったショックから立ち直れていない主人公ミアが孤独を癒そうと親友ジェイドと気晴らしに出かけたパー
>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.6

結論から言えば、いつものアキカウリスマキである。それは現代のおとぎ話であり、悪くいえばご都合主義だ。でも、それよりも何よりもこの混迷した2020年代に、アキカウリスマキがまた映画を撮ってくれた、という>>続きを読む

イン・アワ・ディ(2023年製作の映画)

3.3

カンヌ監督映画週間にて。英文字幕だった。こういう機会がなければ、日本でホン・サンスを観られる機会は限られるので、ありがたい。本作はここ最近のホン・サンス作品において、特に玄人感を感じさせる、普段以上に>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

2.5

VFXは凄い。そして、ゴジラの底知れぬ不気味さの演出も良かった。特攻を逃げ帰ってきた男、という主人公の設定も悪くない。でも細かなディテールが気になった。ゴジラの放射能汚染問題みたいなものがほとんど描か>>続きを読む

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