pherimさんの映画レビュー・感想・評価

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ユニコーン・ウォーズ(2022年製作の映画)

3.7

テディベアとユニコーンの神話的対立。🦄の絶滅描く聖典を信じ森へ分け入る🐻兄弟が目撃した倒錯と狂気。残酷さの奥へ潜む世界のリアル。

ロング・ウェイ・ノース以降、各国の粒選りアニメ配給を続けるリスキット
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バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)

3.9

バンリュー映画の極“レ・ミゼラブル”のラジ・リが、コロナ禍を隔て描くのは、黒人市長が移民らへ立ち退きを迫る世界。

脚本参加“アテナ”の迫真団地描写そのままに地域政治を加味した視点の肉薄感、相変わらず
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エドワード・サイード OUT OF PLACE 4K(2005年製作の映画)

4.0

思想家サイード [1935-2003] の足跡追う2005年作。彼の残熱さえ感じられる人々の語りと、パレスチナの光景。

“阿賀に生きる”の佐藤真が、このテーマで撮ったことの意義は今日でこそ煌めく。1
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阿賀に生きる(1992年製作の映画)

5.0

佐藤真『阿賀に生きる』 で1番好きなのは、風吹きすさぶ河原の場面。

元渡し守のお爺さんが河原で空を見上げ、幾つもの名で風を呼び分け始める。景色がぐんぐん輪郭を深めていく。

山里の暮らしや民家の宴、
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母とわたしの3日間(2023年製作の映画)

3.5

死後3年のオモニが、天界から3日だけ地上へ降りる休暇を得る。

米国名門大の教授を辞して定食屋を開いてるらしい娘を見守り、ときに愚痴る“肝っ玉オカン”ぶりに和む。懐かしの風土と味を味わう、いかにもソウ
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栄光(1926年製作の映画)

3.9

What Price Glory

第一次大戦から上海、パリ。どこでもライバル同志の大尉と軍曹、決着は宿場娘めぐる恋の鞘当てへ。

犯罪映画の巨匠ラオール・ウォルシュによるサイレント秀作。命の奪り合い
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関心領域(2023年製作の映画)

4.6

幸福な家族景、の壁向こうから響く不穏。

アウシュビッツ収容所長ルドルフ・ヘスの邸宅が象徴する他者犠牲への無関心ぶり、その今日性に震撼する。

ただ理想の家庭イメージを追い求める姿が狂気そのものと化す
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劇場版 おいしい給食 Road to イカメシ(2024年製作の映画)

3.7

1988年の函館。給食に出たジャージャー麺の食べ方で生徒とバトルする熱血教師(市原隼人)のオトナ気なさが相変わらず面白い。

配膳後の先生の小躍りは、中毒性を超えもはや伝統芸能の域。今後も寅さん風にご
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バーバリアン(2022年製作の映画)

3.8

Airbnb泊まろうと思ったら、地下がとんでもないことになっていてもぅ大変。

二重予約で鉢合わせた起業家イケメンとイイ感じになる導入部や、セクハラ訴訟で人生崩壊するオーナーとかの枝葉が面白く、配役も
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ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版(1973年製作の映画)

3.6

終末世界を生きる刑事が、食糧企業幹部の殺害事件から奇怪な真実へと迫る。

家具化した娼婦との情事、生の牛肉に涙する老人、絶望し切った神父。

50年前の想像力が描く、2022年のディストピア世界がレト
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PS-1 黄金の河(2022年製作の映画)

3.7

南インド10世紀チョーラ朝の王子2人と王女が、渦巻く陰謀から王国を守るべく各々の立場で奮戦する。

バーフバリのファンタジー要素はなく、質実な史劇を派手なアクションで彩る趣向はRRRを想わせる。

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湖の女たち(2023年製作の映画)

4.1

一切の弛緩なきクライムノワール秀作。

浅野忠信が、脇役ながら警察の組織的堕落を一身に背負う中年刑事の粗暴さと切なさを重厚に体現、真面目過ぎて底の破れる主人公役/福士蒼汰を引き立てる。

松本まりかの
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ボブ・マーリー:ONE LOVE(2024年製作の映画)

3.9

レゲエの神様がどう生き、どう死んだか。

ラスタファリ思想上の信念から足親指の癌切除を拒み、36歳で夭折した歌聖の生涯。妻や息子&娘らを製作陣に迎えたことで、神話化されがちな逸話の内幕が質実に再現され
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シド・バレット 独りぼっちの狂気(2023年製作の映画)

3.7

ピンク・フロイドを創った男の天才性と、脱退後の30年へ迫ったドキュメンタリー。

狂ったと噂されたその後の足取りを、関係者取材から炙りだす。創造性と実人生との交接が孤立を伴う様に、サリンジャーなどが想
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バービー(2023年製作の映画)

3.8

マーゴット・ロビーのハマり具合と、ワンハリでもスーサイドでもなくアイ,トーニャが想起された意外性。

グレタ・ガーウィグ監督、レディ・バード&若草物語からの展開ヤバ、次が楽しみ。

あとライアン・ゴズ
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アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年製作の映画)

3.7

ナンシー・ケリガン殴打事件と五輪本番での号泣が世を沸かせたトーニャ・ハーディングの伝記コメディ。ホワイトトラッシュ=白人貧困層のガラの悪さをダシに笑いをとるブラックな殺伐描写が妙に説得的で、可笑しくや>>続きを読む

ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.0

恐怖の教室。校内で相次ぐ窃盗をめぐり、教師カーラは証拠を押さえ告発するも、事態は壮絶な地獄絵巻へ。

多様性の極地と化した学校を素材とする映画が増えた昨今でも、この方向性は新しい。権利に煩いアラブ人男
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ティアーズ・オブ・ブラッド(2022年製作の映画)

3.5

地下鉄ホームから転落した若者と、急停止させた運転士が父子と判明して始まるクライムノワール。

警察内部でも汚職や父娘関係が描かれ、謎多き運転士ともども錯綜する、ラジ・リ版レ・ミゼラブルで脚本を手掛けた
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夢の中(2023年製作の映画)

2.8

カメラマン志望の青年と、死の予感に包まれた女性との夢幻的ボーイミーツガール物語。

画と音楽で魅せる映像詩展開ながら、台詞がダブつく印象に若書き感も孕む都楳勝監督作で、『階段の先には踊り場がある』他を
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蝸牛(2019年製作の映画)

2.9

中学3年生となった野球少年は、己の性に違和感を覚えだす。幼馴染の少女は、意中の少年がトランスジェンダーとして目覚める予感に慄える。

性未分化をカタツムリに象徴させる発想の起点が面白い、『夢の中』の都
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フューチャー・ウォーズ(2022年製作の映画)

3.3

原発の爆発により終末へ向かった2555年の世界線から、爆発を防ぐためタイムトラベラーが訪れる。

時間警察との格闘などがユーモラスに描かれ、フランス産低予算コメディ映画特有の軽躁感が全編を占めながらも
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ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)

4.2

戦争映画の極北がまた一つ。沖縄・前田高地の凄惨。『パッション』を凌ぐ血肉の騒擾、砲火を浴び信仰を貫く姿影。メル・ギブソンが太平洋戦争を撮ればという期待値を完璧に充たす本作が、祈る男を通し鮮烈に描くのは>>続きを読む

トランスフュージョン(2023年製作の映画)

3.6

最愛の妻を事故で亡くした元特殊部隊員が、息子との関係回復のため裏稼業へ手を出したら、さぁ大変。

“Transfusion=輸血”への着目は珍しく、音楽と孤立感ある夜描写が趣深い。ハクソー・リッジ他、
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

5.0

もうね、現代の神話でした。
砂こそこの現実の本性かつ依代っていう。

エイリアン並みに1を超えてきたDUNE 2、今日の語り部は道具にIMAXを使うのね。

シャラメもゼンデイヤも、佇まいだけで世界が
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夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

この喜びも悲しみも必ず終わる。
いまここにしかない闇と光。
夜明け前が一番暗い。

メンタルを病む主人公ふたりにこそ、現代に適応した健常者たちよりずっと体温を感じる世界観。次は何を見せてくれるのか、今
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人間の境界(2023年製作の映画)

4.0

難民を人間兵器とみなすベラルーシのEU移送政策と、対抗するポーランドの強制送還措置との狭間で、人間性を剥奪される人々。

傑作『赤い闇』の監督A.ホランドが、森奥でシリア/アフガン/ウクライナ難民らが
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殺人鬼の存在証明(2021年製作の映画)

3.6

“Казнь”

十年前の誤認逮捕で失墜した名誉挽回を賭して、熟練刑事が連続殺人犯を追い詰める。

ロシア映画独特の軽躁感を伴うクライムノワール展開は先が読めず面白い。プーチン政権下の元検事局長から
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青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.0

台南のバイト先に現れた日本人女性に恋する青年が、やがて旅する切なき信越会津。

藤井道人監督/脚本の、東アジア恋愛映画の粋を極める巧さに慄く。中華圏の岩井俊二潮流に台湾新電影風味、主題歌ミスチルで主演
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ジョン・レノン 失われた週末(2022年製作の映画)

3.4

「23歳で初めて同棲した相手がジョン・レノン!」

オノ・ヨーコから交際を促された秘書メイ・パン。袂を分かったマッカートニーの訪問、デヴィッド・ボウイやエルトン・ジョンとのセッションなど“失われた週末
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メークアップ・アーティスト(2021年製作の映画)

3.8

メイクを学びに大学へ通っていいという結婚時の約束を守らない夫との軋轢と、雄大なザーグロス山脈との対照が爽快なドキュメンタリー良作。

撮影班の都会感覚に妻が影響されてると業を煮やす夫の姿はユーモラスで
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私は今も、密かに煙草を吸っている(2016年製作の映画)

4.7

超傑作。

ハマム(公衆浴場)での半日の出来事のうちに、《ここで女が生きること》の苦しみと軋み、歓びのすべてが照射される。

パピチャと同じアルジェリア内戦下1995年を、女性スタッフのみで撮り切った
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グンダーマン 優しき裏切り者の歌(2018年製作の映画)

3.5

東ドイツで気高く反骨の歌声を響かせたミュージシャンが、実はシュタージ(秘密警察)へ通じていた、という実録物。

1980年代東独の若者文化めぐる再現演出と、度々挟み込まれる雄大な褐炭採掘の労働現場が目
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ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ(2022年製作の映画)

3.5

おかん、奮戦。

グアンタナモへ収監された無実の息子を救うべく、トルコ移民の立場からドイツ政府を動かすまで。

前作『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』からの展開、メルケルに母的連帯感抱く場面などアン
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無名(2023年製作の映画)

4.2

トニー・レオンの含み笑いがドハマりするスパイ活劇。

40年代の魔都上海で錯綜する各勢力利害を、幾重にも真意を隠すスパイたちの対立が象徴する。

W主演で憎み合うワン・イーボー/王一博とのスタントなし
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パレード(2024年製作の映画)

3.3

この世に未練を残した者たちが集う三途の河原の人間模様。

息子を探す女/長澤まさみ、元ヤクザ青年/横浜流星、映画制作の想い残す男/リリー・フランキーら好演。ヴィレッジ/新聞記者の藤井道人監督作で、両作
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WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)

4.1

ゲイクラブで知り合った二人のある週末。ノッティンガムのありふれた街なかを舞台とし、会話を軸に映し出される濃密な二日間。心の動きを遅延させゆくテープレコーダーの効果が見事。丹念に場面場面を織り込むアンド>>続きを読む

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